池井戸潤「主人公が壁をどう乗り越えるのか、とても悩みます」人間を書く人間力 (2/2ページ)
■もっと“人間”を書くべきだと思ったんです
小説家デビューして、しばらくはプロットを先に考えて、その通りに登場人物を動かしていたんですが、なんか書いていておもしろくないなって感じる時期があったんです。
その時に、書き方を変えてみようと、登場人物にリスペクトを持って、もっと“人間”を書くべきだと思ったんです。それを実践したのが、06年の『シャイロックの子どもたち』でした。その次の作品が、今回映画化された『空飛ぶタイヤ』。
自分ではエンタメ小説を書いているつもりでも、会社や銀行が舞台ということで、書店では企業小説の棚につっこまれていた。これが初めて直木賞の候補になり、文芸の棚にも置いてもらえるようになったんです。
僕にとっては、原点ともいえる作品で、これだけが登場人物一覧表が写真入りでありますね。ビジネス誌とかで、イメージにあった顔写真を見つけて切り抜いて、一覧表に貼っていました。
今でこそ、映画化される作品になっていますけど、書いた当初はこんなに売れてなかったんですよ。ドラマ『半沢直樹』がヒットしてから、売れるようになりましたけど。
そう考えると、こんなに多くの人に読んで頂けるようになったのは、“ちょっと運が良かった”ぐらいだと思いますね。
自分が生活していくなかで、新聞を読んだり、雑誌見たりして積み重なってきたもの。同じものを見ても人によってひっかかるところって違うじゃないですか、それをプロダクトアウトしたものが、たまたま多くの人が求めてくれたってことだけなのかなと。
そんな大したものを書いているわけではないし、おもしろいんじゃないのっていうのを気楽に書いているだけですから。売れなくなったら、そこで終わりなので、書き続けられる程度には、がんばっていきたいですね。
■池井戸潤さん原作の映画『空飛ぶタイヤ』は全国ロードショー中!
池井戸潤(いけいど・じゅん)
1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビュー。10年『鉄の骨』で吉川英治文学新人賞、11年『下町ロケット』で直木賞を受賞。主な作品に、半沢直樹シリーズ(『オレたちバブル入行組』ほか)、花咲舞シリーズ(『花咲舞が黙ってない』ほか)、『ルーズヴェルト・ゲーム』『七つの会議』『民王』『陸王』『アキラとあきら』などがある。初の映画化作品『空飛ぶタイヤ』(主演:長瀬智也)が公開中。