池井戸潤「主人公が壁をどう乗り越えるのか、とても悩みます」人間を書く人間力 (1/2ページ)

日刊大衆

池井戸潤「主人公が壁をどう乗り越えるのか、とても悩みます」人間を書く人間力

 ありがたいことに、毎日忙しくさせてもらっていますけど、休みをとろうとかって思わないんですよ。変に休むと、次に仕事モードにするときにとてもめんどくさいので。まあ、文学を書いているわけではないし、半分、遊びみたいなものですから。

 以前、銀行に勤めていましたけど、サラーリマン生活には、もう絶対に戻れませんね。就業時間が決まっているし、変な会議がいっぱいある。人間関係とかめんどくさいこともたくさんある。今なんて、毎日が日曜日みたいですからね。

 小説って自分がおもしろいと思うものを提案する世界なので、自分が書いていておもしろくないとダメだと思うんですよ。書くのが苦手な人にとっては苦しい作業なのかもしれませんが、僕は書くことが好きなので、楽しい作業をしているという感覚ですね。

 これを書いたら、読者は喜ぶんじゃないか、驚くんじゃないかと考えながら、書くのが一番の醍醐味。作家としては、そのページをおもしろくめくってもらうことが何よりですから。むしろ、ゴルフとかのほうが、ストレス溜まりますね。うまくいかねぇなって。

 もちろん、“これでいいのかな”って悩むこともあります。小説って、見えない歯車が精緻に組み合っているんですが、それがいつのまにかズレていたりする。ズレに気付いたとしても、それがスキルとして次に活きるかって聞かれたら、わからない。

 書いている最中に行きづまる時もありますよ。主人公が、難しい場面に出くわして、どうすればいいかわからない時、僕も一緒に困るんです。難しいところなんですけど、実はそこが読者にとって一番の読みどころでもある。そこを逃げちゃうと、逃げている小説になってしまうので、主人公はこの壁をどう乗り越えるのか、とても悩みますね。

 僕は、物語の骨組みを先に考えてはいないんですよ。設定と登場人物を決めて、あとは自由に書いていく積み上げ方式。だから、実際に書き上がるまで話がどうなるのかってわからないんですよ。登場人物は書いていくうちに肉付けされて、人間らしくなっていくんです。

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