【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第16話 (2/3ページ)

Japaaan

相も変わらずその目に色は映らない。しかし、光は確かにそこにあった。

絵の中の自分は、寛いだ婀娜な姿で、確かに月の光をその目に映している。目が弱いみつは実際には月の光に顔は向けなかったが、国芳が絵の中のみつに月の光を見せてくれた。

ほんに、優しい人。・・・・・・

関係を絶ってしまった事は、これで良かったと思う反面、少し惜しい気が今でもしている。

「へくしっ」

ほんの少し開けていた障子窓から入る冷気が、みつの細い手先を冷やした。

手をこすりながら窓を閉めようと立ち上がったその時、腰高障子の窓の桟に飼い猫のぶちがぴょんと飛び乗った。

にゃあと猫が鼻にかかった声音で鳴き、隙間から外に出ようとしたので慌てて窓際に駆け寄り、

「ぶち駄目よ、出ちゃあ」

と抱きかかえたその時、外から、

「おみつ!」

ふと、己の名を呼ぶ声が聞こえた。

「おみつー!」

「おみつー!」

その声はだんだん大きくなり、情けなくなるほど必死に自分の名を呼び始めた。

「え!?」

慌てて障子窓を全開すると、目に飛び込んできたのは、空を彩る無数の凧だった。

「何、これ・・・・・・」

みつは言葉を失い、空を眺めた。

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