金足農対大阪桐蔭の激闘で思い出す「あの公立高校」が成し遂げた偉業! (2/2ページ)

アサ芸プラス

14回裏に1死三塁という絶好のサヨナラの場面を作ったのだ。しかしここで星稜の三塁手・若狭徹(元・中日)が“隠し球”という奇策を敢行。三塁走者の森川康弘(三菱自動車水島)をアウトにし、ピンチを脱した。これで流れは星稜へ。

 すると16回表2死一、三塁から主将の山下靖が右翼線へ勝ち越しの適時打。3たびリードを奪う。その裏、箕島の攻撃は簡単に2死。ここで打席に入ったのが前回、隠し球でアウトになっていた6番・森川だった。失敗を取り返そうと打つ気満々の森川は初球の高めに手を出すが、力のない打球が一塁ファールゾーンへ。万事休すと思われたが、次の瞬間、星稜の加藤直樹が転倒し、命拾いした。実はこの年からフェンス側に敷かれた人工芝の切れ目に足が引っかかったのだ。そしてふたたび奇跡が起きる。堅田の投じた5球目の直球をフルスイングすると、打球はカクテル光線きらめくなか、左翼スタンドへと消えていったのである。またも2死無走者からの同点弾。こうして2度の奇跡を起こした箕島は18回表の2死満塁のピンチも防ぎ、その裏の攻撃へ。この回箕島が無得点だと翌日再試合となる寸前の1死一、二塁から5番・上野敬三(元・読売)が左前適時打を放ち、劇的なサヨナラ勝ちを収めたのだった。なお、NHKはこの試合を夜6時から総合⇒教育テレビとリレー中継したが、その視聴率は29.4%。現在でもNHK教育テレビの歴代最高記録となっている。

 壮絶な死闘を制した箕島はこの後、城西(東東京)に4-1、横浜商(神奈川)に3-2、そして決勝戦でも池田(徳島)に4-3と逆転勝ちし、史上3校目となる春夏連覇を達成する。優勝投手となった箕島のエース・石井は甲子園春夏通算14勝1敗を記録。これはPL学園(大阪)の桑田真澄(元・読売など)に抜かれるまで戦後の最多勝記録であった。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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