秋津壽男“どっち?”の健康学「生活習慣病の症状緩和のためにできること。効率的に野菜の栄養素を摂取して生活改善」

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秋津壽男“どっち?”の健康学「生活習慣病の症状緩和のためにできること。効率的に野菜の栄養素を摂取して生活改善」

 40代を越えて気をつけたいのが生活習慣です。特に生活習慣病である糖尿病と高血圧は要注意です。肥満体質の人は食生活に気を遣うなど、体重を減らすべきです。例えば1日1食は炭水化物を摂らない、空腹時に軽いジョギングをする、よくかんで食事に時間をかける、禁煙&節酒を心がけるなど、生活習慣病はちょっと心がけるだけで症状が改善されます。

 食生活でいえば、米などの炭水化物を減らす代わりに積極的に食べてほしいのが野菜です。食事の際、最初に野菜を食べることで急激な血糖値の上昇を防ぎ、肥満予防(=ベジファースト)にもなります。

 中でも糖尿病に有効な抗酸化物質であるβ‐カロテンを多く含む野菜は効果的です。にんじんやかぼちゃはβ‐カロテンと同時に糖質も高いので食べすぎないよう注意すべきですが、赤ピーマンやホウレンソウ、ブロッコリーなどは、ベジファーストとしてオススメしたい野菜です。

 では、ここで質問です。生野菜と温野菜では、どちらがより効果的に栄養素を摂取できるでしょうか。

 野菜の大きな栄養素であるビタミンは水に溶けやすいビタミンB群やビタミンCと、脂に溶けやすいビタミンA、D、E、Kに分かれます。例えば、ビタミンCを含む生のホウレンソウを1分ゆでると25%、2分だと40%、3分だと50%のビタミンCが失われます。こうした野菜は生のほうが栄養素が多く含まれますが、ビタミンA、D、E、Kを含む野菜であれば温野菜程度の加熱はビタミンもさほど劣化しません。さらに言えば、野菜の繊維質も加熱とは無関係なので安心してください。

 熱に強い栄養素の代表はリコピンです。中でもトマトはリコピンを多く含む代表的な野菜であり、血糖値を上げにくくする効用が見込まれます。さらに、生のトマトより市販のトマトジュースのほうがリコピンは豊富で、リコピン摂取量の1日あたりの基準(15ミリグラム)も、生トマトでは3個ほどですが、トマトジュースならコップ1杯で得られます。しかもリコピンは温めても栄養分が減りません。オリーブオイルを加えて温めると、吸収率は4倍以上に上昇します。「ホットトマトジュース」を毎日の習慣にしてみてください。

 逆に生野菜の場合、冷たいまま食べると胃腸を冷やすなどのデメリットが生じます。また、生野菜はかさが大きくなりがちです。しかし、加熱野菜ならば熱が加わるだけでなく、見た目小さくなり、カロリーも抑えられます。ゆでたあとにしっかりしぼればキャベツもホウレンソウも、食べやすくなるのはおわかりでしょう。生野菜に必要なドレッシングなどを使わずに済むので、カロリーも抑えられます。

 以上を総合すると、生野菜のサラダより温野菜のほうがヘルシーであり、私は温野菜をオススメします。

 とはいえ、メインディッシュとのコンビネーションを考えると生野菜がベストなケースは少なくありません。とんかつには生キャベツの千切りのほうが好相性で、味わいも深くなります。熱に弱い野菜はトッピングして、温野菜をメインとするのは一つの手です。

 水溶性のビタミンBを多く含むカイワレ大根やミツバなどは、ゆですぎると栄養分が流れてしまいますので「なるべく短時間(1分前後)でゆでる」ことがポイントとなります。また、電子レンジで加熱すると栄養素を損なわれずに済みます。

 私がよく食べるのは「おひたし」です。サッとゆでたホウレンソウなどの菜っ葉にかつおぶしと薄めのダシをかけるだけで副菜に最適です。コレステロールを増やすマヨネーズや、塩分が気になる醤油などをかけずともおいしく味わえる、オススメの温野菜です。

■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。

「秋津壽男“どっち?”の健康学「生活習慣病の症状緩和のためにできること。効率的に野菜の栄養素を摂取して生活改善」」のページです。デイリーニュースオンラインは、週刊アサヒ芸能 2018年 8/30号“どっち?”の健康学生活習慣病秋津壽男野菜カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
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