世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第286回 国際リニアコライダーと伊勢神宮 (2/3ページ)
直線20㎞の超電導空間を建設し、両端から電子と陽電子を光速に近い速度で飛ばし、中央で衝突させることで宇宙開闢の謎を探る。質量の素粒子であるヒッグス粒子を解明する。人類にとって極めて重要な直線型加速器ILCを岩手県北上山地に建設する。これほど現在の日本にとって必要なプロジェクトはない。ところが、例により「予算」「財政」を理由に、日本政府は未だにILC誘致を決定していない。
日本の物理学は、予算削減という荒波を受けながらも、「まだ」世界最高水準を維持していまる。また、北上にトンネルを掘りぬく土木・建設業界の技術力も「まだ」ある。
さらには、IHIや浜松ホトニクスをはじめ、加速器という「超巨大な精密機器」を建設するための工業力も「まだ」存続しているのだ。だからこそ、世界の物理学会は日本にILC建設を委ねようとしている。
ILCを建設することになると、日本の若者が次々にILC関連プロジェクトで働き、既存の技能が磨かれる形で継承されていくことになる。
何しろILCは建設すればそれで終わりというわけではない。建設に10年。その後は30年以上もの期間、運用を続けることになる。つまりは、今の日本の子供たち、あるいはまだ生まれていない子供たちがILCで働き、物理学者、土木・建設技術者、さらには製造業の技術者として「人材」に育ち、日本の将来の供給能力を支えることになるわけだ。
逆に、ILC誘致を断念すると、世界の物理学者は中国が表明している周長57㎞の「SPPC(super proton proton collider)」に向かうことになるだろう。日本の物理学は死に絶える。
さらにわが国は土木・建設業、そして製造業についても、技術を磨く絶好の機会を逸し、衰退への道を歩んでいくことになる。やがて現場の科学者、技術者の方々が一人、また一人と消えていき、技能継承も行われず、わが国は発展途上国に落ちぶれることになるだろう。
勘違いをしている人が少なくないが、技能、技術とは、国家や企業に蓄積されるものではない。実際には、技能も技術も「ヒト」に宿る。そして、ヒトには寿命がある。