「ディッキンソニア」は地球最古の動物だった!5億5,800万年前の化石でその正体が明らかに(オーストラリア研究)

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「ディッキンソニア」は地球最古の動物だった!5億5,800万年前の化石でその正体が明らかに(オーストラリア研究)
「ディッキンソニア」は地球最古の動物だった!5億5,800万年前の化石でその正体が明らかに(オーストラリア研究)

image credit:AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY

 約5.5億年前に生きていた、この謎の生物の正体をめぐっては、1世紀近くも研究者の頭を悩ませていた。

 全長1.4メートルにもなる楕円形のそれは、巨大な葉のようにも見えるし、指紋のようにも見える。コケ植物なのか?巨大な単細胞生物なのか?あるいは、別の惑星からやってきたのか?

 だが、脂質の痕跡が見つかったおかげで、やっとこの謎の生物体が地球最古の動物であることを突きとめることができた。

 先カンブリア時代エディアカラ紀の海中に生息していた「ディッキンソニア」である。

・ロシアで発見された謎の生物の化石

 この化石は、ロシア北西部の白海近くで、これまでの有機体の証拠としては例外的に良好な保存状態で発見されたものだ。

 これは「ディッキンソニア」として知られる奇妙な生物に由来するものだ。

 およそ5億5800万年前に生息していたと言われるディッキンソニアは、体長およそ1.4メートル、楕円形で節で分かれた体をしている。

 だが手足や口、臓器、頭部がはっきり見分けられるといった、動物としての典型的な身体的特徴に欠けていた。

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image credit:AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY


・化石に残されていた脂質から地球最古の動物であることが判明

 何十年もの間、変わった体をもつディッキンソニアや、同時代のほかの生き物、先カンブリア時代エディアカラ紀(6億2000万年前~5億4200万年前)は、生命の進化の木に確実に配置するのが難しい生物だった。

 しかし、ロシアで発見されたディッキンソニアの化石には、以前にはこの種の化石には見られなかったものの痕跡が残されていた。

 オーストラリア国立大学地球科学研究所(ANU)などの研究チームが、化石を発掘し、内容物を分析したところ、化石化の跡に有機組織が保存されていたのだ。

 この跡や生体膜からコレステロールの分子を発見した。コレステロールは動物であることを証明する脂質だ。

 「研究者たちは、75年以上もの間、ディッキンソニアのようなエディアカラ生物群の奇妙な化石の生物相はいったいなんなのかを模索し続けてきた。巨大な単細胞アメーバ、地衣類、進化の実験の失敗作、あるいは地上の一番始めの動物のなどいろいろ考えた」共同著者で、ANU准教授のヨッヘン・ブロックスは言う。

 「化石に残っていた脂質のおかげで、ディッキンソニアが最古の動物の化石であることを確認でき、古生物学が長年追い求めてきた謎が解決できた」

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image credit:AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY


・地球最古の生物は?

 地球に一番始めに現われた生命は微生物だ。最古の例は35億年前の岩までたどることがことができる。

 多くの複雑な体の構造をもつ動物の出現はそれから何十億年後まで待たなくてはならない。それは、エディアカラン紀時代の次に始まり、4億9000万年前まで続いた、カンブリア爆発のときで、この間に劇的な進化活動が爆発的に起こった。

 だが、最古の動物はなんだろう? 

 軟体動物の化石の証拠はめったに見つからないため、突きとめるのは至難の業だ。

 海綿はその単純な体制(動物の基本的形式)から、長い間、もっとも原始的な動物だと思われてきたが、6億3500万年前に存在していたことをにおわす証拠があるものの、最古の海綿の化石は、5億2000万年前のものしか残っていない。

 2017年に発表された研究によれば、クラゲが海綿よりも古い生き物かもしれないということだが、この結論は遺伝子分析によって引き出されたもので、実際の化石の証拠はない。


・ディッキンソニアが動物であることの証明

 ANUのイリヤ・ボブロフスキー博士によると、オーストラリアでこれまでに採取した、ディッキンソニアとして知られる化石のほとんどは、熱や圧力などに激しくさらされた岩場から採取される為、有機物質の痕跡は破壊されてしまっていたと言う。

 一方で、ロシアの辺境で良好な状態の化石発見の可能性があったが、その現場はまさにリアルクリフハンガー状態の場所でだったという。

 「これらの化石は、白海の60~100メートルの崖の真ん中にありました。断崖の縁からロープでぶら下がって、砂岩の巨大な塊を掘り出して投げ下ろし、水で洗わなくてはなりませんでした。この作業を何度も繰り返し、やっとのことで念願の化石を見つけたのです」

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image credit:AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY

・ディッキンソニアが古代生物の謎を解くカギに

 古生物学界では、ディッキンソニアが本当に動物なのか長い間疑われていたが、新たな研究がこの不思議な生き物についてのほかの仮説をすべて葬ったと、マサチューセッツ工科大学の地球生物学教授のロジャー・サモンズは語る。

 研究には直接かかわっていないサモンズによると、研究者たちによるこの特殊な発掘現場での化石の収集で、ここが分子分析のための豊かな場所であることを実証したわけで、ディッキンソニアのような古代生物の謎を解くための研究がさらに続くだろうという。

 「形や形態を見ることで、形態学やサイズといったことまでわかります。でも、これらの生物が大きな体系図のどこにおさまるのか、もっと詳しく説明するための分子記録のようなものはなにもありません」

 この発見は、9月20日サイエンス誌のウェブ版に発表された。


Scientists reveal secrets of oldest known animal fossil
References:science / theguardian/ written by konohazuku / edited by parumo
追記(2018/9/25): 本文の一部を修正して再送します
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