語呂合わせで名歌が変貌!思わずクスッと笑ってしまう百人一首のパロディ作品を紹介

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語呂合わせで名歌が変貌!思わずクスッと笑ってしまう百人一首のパロディ作品を紹介

人気モノにはつきものの「パロディ」

ジャンルを問わず、人気の商品やキャラクターなどにはパロディが多く登場するものです。お正月のかるた遊びで大人気の百人一首にも、実は多くのパロディが存在します。

今回は、中には思わずクスッと笑ってしまうようなものまである百人一首のパロディを、一部ご紹介いたしましょう。

語呂合わせともじりで名歌が変貌!

藤原定家の撰による小倉百人一首のパロディには、いくつかの「もじりのパターン」があります。
今回は吉海直人著『百人一首の正体』から、トップバッターの天智天皇の歌

秋の田の かりほの庵の とまをあらみ 我が衣手は 露に濡れつつ
のパロディを比較してみました。

秋の田の 刈り干すいねの ひまをあらみ 六あみだへぞ まいりゆきつつ
(『江戸名所百人一首』/寛文3(1663年))

この歌は、元歌の上の句を活かしつつ、「かりほの庵の」に音が似た「刈り干すいねの」に変え、下の句では名所「六阿弥陀」へ参拝している歌となっています。このパロディ百人一首は、このように元々の百人一首の歌を江戸の名所を紹介する内容の歌にもじった歌集となっています。

秋の田の かりほの庵の 歌がるた とりそこなって 雪は降りつつ
(『狂歌百人一首』/天保14(1843)年)

こちらも上の句を活かしたもじりのパターンですが、面白いのは最後の句に光孝天皇の歌の最後の句「雪は降りつつ」が入れられていることです。

光孝天皇といえば、後継者のいない陽成天皇の突然の退位により、当時としては高齢の50代半ばにして天皇に即位した天皇ですが、彼の即位は壬申の乱で天武天皇の系統に移ってしまった皇統が天智天皇系に戻ったことを意味していたと言われています。

百人一首に歌を取り上げられた天皇にはある共通点があった:平安時代編

このパロディ歌からは天智天皇の歌と光孝天皇の歌が紛らわしく、かるた取りでよく取り違えられていたであろうことが伺えますが、そのことはまさに「どちらも天皇、それも天智系の天皇の歌である」ということを表しているのです。

上の句だけを変えることで、歌全体が大変身する例も

さて、上記2つは元歌の上の句を活かした例ですが、下の句を活かしたものもあります。

吸ひものを こぼした人の 気の毒さ 我が衣手は 露に濡れつつ
(『芝居百人一首』/天保3年(1832)年)

下の句は元歌のままなのに、上の句を変えることで、全体的にコミカルな歌に変身させてしまうユーモアが光ります。

これらの他にも、近世後期の『百人一出拭紙箱』のような思わずドキッ!とする「ちょっとオトナの百人一首」も存在するなど、パロディ百人一首は実にバラエティに富んでいます。『百人一首』という名は、すでにイチ歌集の枠を超えたブランドを確立していると言えるでしょう。

【参考文献】
百人一首の正体』吉海直人・著(平成28年10月28日 初版発行/角川文庫)

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