「埋まっている物語を掘り出して」村田沙耶香・新刊『地球星人』を語る(1) (2/3ページ)

村田:最初は、今お話しした通り、長野という舞台が決まっていただけでした。ただ、その時点で、主人公の奈月の少女時代と大人になった後を書きたいとは思っていました。現実生活で性的被害を受けていることで、奈月は空想の世界にかなりのめりこみながら暮らしているという設定は早い段階でできていましたね。
女の子への性的搾取についてはこれまでの小説にも入っているテーマなのですが、淡くしか書いてこなかったので、いつか大きな形で書きたいと思っていました。次に少女を書くときは、性的虐待を真っ向から書こうと思っていました。ですが実際に書き始めるととても葛藤があり、苦しいテーマでした。
――なぜ長野を舞台にされたんですか?村田:私の父方が長野の出身で、私自身子どもの頃は夏休みに長野の祖父の家を訪ねて、従兄弟が集まって花火をしたり、お盆の送り火迎え火をしていました。こういう思い出はどこかで書き留めたいという話をしたら、じゃあ次の小説は長野を舞台にするのがいいんじゃないか、となりました。
――奈月だけでなく、奈月の幼い頃の「恋人」だった由宇や、大人になってからのパートナーである智臣も、「普通」であることを強要するかのような社会に生きにくさを感じています。それぞれ本当に切実な問題を抱えているのですが、智臣の言動にはどこかユーモアがありますね。村田:笑わせようと思って書いていたわけではないのですが、ユーモラスさは感じてほしいと思っていました。智臣はすごく変な人というか無邪気な人で、私自身書いていて救われるところがありました。
奈月と由宇だけだと思い詰めて暗くなってしまうところを、明るくしてくれたと思います。後半はお話を引っ張ってくれましたしね。