人はなぜそれを見たがるのか?専門家が語る、犯罪ドキュメンタリーに人気がある12の理由

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人はなぜそれを見たがるのか?専門家が語る、犯罪ドキュメンタリーに人気がある12の理由
人はなぜそれを見たがるのか?専門家が語る、犯罪ドキュメンタリーに人気がある12の理由

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 現実に起きた忌まわしい犯罪や、実際に存在する冷酷な連続殺人鬼を扱った本やドキュメンタリー番組、ネットコンテンツは昔から大人気だ。

 ではなぜ犯罪ドキュメンタリーに惹かれる人が多いのだろうか? その疑問に対する専門家の答えはこうだ。

・1. (ある程度までは)健全な心理である

 あなたが犯罪ドキュメンタリー好きでも別に変人やサイコパスというわけではない。「いたって普通で健康的」とサンディエゴ警察の元主任心理分析官マイケル・マンテル氏は言う。

 犯罪への関心には、いくつもの健康的な心理学的理由があるのだという。

 とは言え、そこには限度もある。そればかり読み、そればかりを話し、新聞に掲載された犯罪の記事をスクラップしたりといったことをしているなら、少々懸念されるかもしれない。


・2. 殺人者の心理が知りたい

 犯罪ドキュメンタリーは犯罪者の心を垣間見せてくれる。これによって、「もっとも基本的なタブーであり、もっとも基本的な人間の衝動」――すなわち殺人に触れることができると犯罪心理学者のポール・マティアッツィ氏は話す。

 また前出のマンテル氏によれば、それは「善と悪の戦いに対する熱狂」であるという。臨床心理士のエリザベス・ルーサ氏によれば、人は子供の頃からそうしたものに魅了されるのだそうだ。

 私たちはなにが人をそうした非道に駆り立てるのか理解したい。自分自身はそうした犯罪を犯したことがないからだ。

 「殺人者の心理についてなにがしかのことを知りたいのだ。そして、それは自分や家族を守ることにもつながる」と作家のケイトリン・ローター氏。だが、それと同時に「常軌を逸した行為に単純に惹きつけられる」という事実もある。

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・3. 犯罪のニュースが大量に報道されるから

 それが人間の性質なのだとしても、そうした番組を大量に流すメディアの役割も大きいだろう。

 「そうしたものの氾濫は50年代以来のこと」とマンテル氏は言う。そして「70年代に結実」した。私たちが持つ犯罪への関心は、それに対する恐怖と表裏一体だ。

 「メディアは、血が流れれば視聴率が取れることを理解している。おそらく今日のテレビニュースの25~30パーセントは個人の犯罪や殺人に関するものだ。そして、むごたらしい犯罪ほど人気が出る」のである。


・4. 大惨事から目を離せないから

 「連続殺人鬼に人が惹きつけられるのは、交通事故、列車事故、自然災害などから目が離せないのと同じ」とドリュー大学の犯罪学者スコット・ボン氏

 「それらに対する一般大衆の関心は、暴力や災害に対する、より一般的な関心が特定の分野で具現化したもの」なのだという。つまり、連続殺人鬼に興味を惹かれるのは、そうしたものから単に目を離すことができないからだ。

 じつは犯罪者が重要な社会的役割を果たしている可能性も指摘されている。

 「犯罪は社会と不可分である。逸脱などではなく、生活と一体化した、不可欠ですらある要素、という考えはさまざまな思想家によって発展してきた」と犯罪ドキュメンタリーライターのハロルド・シェクター氏は言う。

 そうした説が正しいとするなら、「どのような犯罪が犯され、その結果どのように罰せられたのか一般大衆がきちんと知ることができたとき、犯罪者は役割」を果たしたことになる。それを知らせるストーリーを提供しているのが犯罪ドキュメンタリーとも考えられる。

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・5. 犯罪から身も守るため

 『Elon Law Review』に掲載されたメーガン・ボアスマ氏の論文によると、人は自分の幸福にとって脅威となるものに意識を向ける傾向がある。

 また特に女性は犯罪ドキュメンタリーを好むらしいという意見もあり、その理由は自分が犯罪に遭ったとき生存率を上げる方法を学べるからだそうだ。

 2010年の研究では、女性は男性よりも、「犯罪から身を守るヒントが書かれた犯罪ドキュメンタリーの本」「殺人者の動機が書かれた本」「被害者が女性である本」を好むという結果が出ている。

 犯罪から身を守るための情報を得られる話を女性が好むという発見は、そうした好みが被害者になるのではという女性の恐怖を反映したものであるという見解に照らして考えると、筋が通っているように思える。

 実際に犯された犯罪をかじっておくことは「ある種のリハーサルのようなもの」とマウント・シナイ医科大学の精神科医シャロン・パッカー氏は話す。

 また犯罪小説家のミーガン・アボット氏によると、男性は殺人事件の犠牲者となる割合が女性の4倍にも上る一方、女性は身近なパートナーに殺されるケースが7割だという。

 「女性が犯罪ドキュメンタリーに関心を持つのは、彼女たちが生きている世界の直感的な理解を反映したもの」とアボット氏は考えている。


・6. 進化上のメリットがあるから

 ペンシルベニア州立大学ハリスバーグ校の心理学者のマリッサ・ハリソン氏は、危険を避けられるように、危なそうなことには意識が向くよう私たちが進化してきたことが理由だと考えている。

 「恐ろしいことに意識が向いたり、興味が湧いたりするのは、大昔、そうした祖先たちのほうが多くの子孫を残せたから」と彼女は言う。

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・7. 自分が被害者ではないという安心感と人の不幸に対する興味

 犯罪ドキュメンタリーを観ると自分が被害者ではないことに安心できるから、という見解もある。

 犯罪ドキュメンタリー番組『Deadline: Crime』の司会を努めるタムロン・ホール氏は、「番組の視聴者はみんなこんな感想を持つと思う。『でも幸いにも、自分には起きていない』」と語っている。

 またパッカー氏によると、他人の不幸は蜜の味という感覚も大きな要素である。

 「それは必ずしもサディスティックなものではない。だが、災いが降りかかることが決まっているのなら、それは自分以外の誰かの方がいい」と彼女は言う。

 他人の不幸を見ると、災いが降りかかったのが自分ではなかったことにほっとできるのだ。


・8. あわれみを感じるから

 犯罪ドキュメンタリーを観ると、被害者にあわれみを感じることもできる。視聴者は「被害者だけでなく、ときには犯罪者をもあわれむ」とマンテル氏は話す。

 「誰でも怒りを覚えることがあり、『あいつを殺したい』と言うが、幸いにも実際にそうする人はほとんどいない」とパッカー氏。

 また、自分が関与していない犯罪をテレビなどで目にすると、『あの人は人殺しをしなければいけないほど追い詰められていたのだ。そうなったのが自分ではなくてよかった』と感じる人もいる。そのことで安堵感を覚えるのだ。

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・9. アドレナリンが放出される

「恐ろしい場面を目撃した報酬としてアドレナリンが大量に出る」とボン氏は語る。

 「アドレナリンの依存性を知らないのならば、酔って気持ち悪くなるまでなんどもなんどもジェットコースターに乗る子供のことを考えてみればいい。犯罪ドキュメンタリーが人間の感情にもたらす陶酔感は、ジェットコースターや自然災害のそれに似ている」のだそうだ。


・10. 謎を解き明かしたいという好奇心

 人間は謎が大好きだ。「テレビで語られる謎解きに挑むことで、人は部屋でくつろぎながら探偵気分に浸れる。警察が犯人を捕まえる前に、真犯人を当ててしまおうと挑むのだ」とボン氏。

 デサレス大学の法心理学者キャサリン・ラムズランド氏は、犯罪ドキュメンタリーにハマる理由を3つ挙げている。「自分が安全であることを確認するため」「犯罪ドキュメンタリーが謎解きを提供しており、そこから満足感を得られるため」「謎解きが脳の刺激になるため」である。

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・11. 怖いもの見たさ

 ボン氏によると、「安全な環境で恐怖を体験」できることも理由だ。

 「たとえるなら、怪獣映画が好きだった子供が、大人になって実在の犯罪者の話に熱中するようなもの」だ。シェクター氏に言わせれば、連続殺人鬼のストーリーは、「大人のおとぎ話」なのである。

 なにが暴力犯罪の動機となるかという関心は恐れに根ざしている、と話すのはビーコン大学の心理学者A・J・マーズデン氏だ。彼女によると、犯罪ドキュメンタリーは視聴者に「安全なソファに座りながら、人間の闇の側面を垣間見せてくれる」のである。


・12. 単純にストーリーが面白いから

 『Homicide Hunter』の司会を努める元刑事のジョー・ケンダ氏は、物語の面白さを指摘する。

 「数千年前から人々は火を囲って、『何か話して』とせがんできた。面白い話をしてあげれば、また次の話をとせがんでくる。実在の人物による本当にあった話をすれば、いっそう興味を掻き立てることができる。それこそ、マンネリ気味のハリウッドの脚本家以上にだ」

 だが同時に多くの犯罪ドキュメンタリーにだってお決まりのパターンがある。

 「犯罪ドキュメンタリーに人気がある理由を考えるには、どのストーリーにも共通のメタナラティブ(歴史的な出来事や知識の包括的な説明と考えられる概念のこと)に注目しなければならない」とメリーランド大学の社会学者レスター・アンドリスト氏は話す。

 「典型的な犯罪ドキュメンタリーの話は、善人と悪人が簡単に分かる。さらに重要なのは、かならず犯罪が解決されていることだ。謎解きには答えがあり、司法システムも不完全であっても一応機能している」

 不思議にも、こうした犯罪のストーリーはいかに恐ろしくとも、最後には気分が安らぐものだ。「目まぐるしく変化するこの世界で、犯罪ドキュメンタリーは、それでも世界が回っている仕組みは有用なのだという、昔からある理念を確かめさせてくれる」とアンドリスト氏は言う。

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written by hiroching / edited by parumo
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