大腸菌が描いたモナリザ。そしてアインシュタインの顔からダーウィンの顔に変化(イタリア研究)

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大腸菌が描いたモナリザ。そしてアインシュタインの顔からダーウィンの顔に変化(イタリア研究)
大腸菌が描いたモナリザ。そしてアインシュタインの顔からダーウィンの顔に変化(イタリア研究)


 腸内に生息するバクテリアの一種、大腸菌はモデル生物の一つとなっており、各種の研究で材料とされるほか、遺伝子を組み込んで化学物質の生産にも利用される。

 そのDNAにデータを記録したり、保存して読み込んだり(関連記事)たりと、様々な利用が期待されている。

 そんな中、イタリアの研究者たちが、遺伝子操作した大腸菌でモナリザ像を描き上げることに精巧した。

 もともとは異なった特性を結合させて、大量のバクテリアをコントロールすることができるのか試す実験だったのだが、大腸菌は期待以上の働きをしたようだ。

 いつか、バクテリアを使ったミクロ輸送装置や3Dプリントができるかもしれない。

・大腸菌の鞭毛と明るいところに移動する習性を利用

 研究を率いた、ローマのサピエンツァ大学のロベルト・ディ・レオナルド氏は、「マイクロスケール的ななにかを安く手軽に作り上げるレンガとして、バクテリアを利用することができるかもしれないという概念の興味深い証明だと思う」と語る。

 進化とは、たくさんの見事な生き残り戦略を生み出すものだが、こうした特質がすべて、同じ生物体に同時に備わるわけではない。

 ご存じのように、魚は口がきけないが、水中で息ができる。一方、人間は口はきけるが、水中では溺れてしまう。

 今回のケースの場合、研究者たちは、光に反応する感光性タンパク質、プロテオロドプシン(細菌の光依存性プロトンポンプ)──要するに細胞の太陽電池パネルのようなもの──を大腸菌の動く小さな尾である鞭毛と合体させることに関心をもった。

 バクテリアが光をたくさん受け取るほど、尾が早く動くシステムを作り出そうと思ったのだ。

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d)は修正前(左)と後(右)の光のパターン
image credit:elifesciences

 プロテオロドプシンをスライスして、その遺伝子をバクテリアに埋め込む。そしてプロジェクターのレンズを顕微鏡のレンズと取り換え、バクテリアを保持する1画素当たり2マイクロメートルのステージ上に画像を投影する。

 光が足りないと、群がってひと塊になるバクテリアの動きは遅く、光が多いと速く動くことがわかっている。この群がりパターンの違いで陰影を作り出し、最終的にひとつの画像ができる。

 バクテリアが多い部分は白く見え、バクテリアが少ない部分は黒く見えるからだ。研究者たちは画像を作り出すために、ネガを光らせてみた。


微生物がアインシュタインの顔からダーウィンの顔に変わっていく。このGIF画像は早送りしているもので、実際にかかっている時間は5分間

 論文によると、まだいくつかの問題点があるという。

 バクテリアはゆっくり位置を変えるので、像がぼやけてしまうのだ。そこで、最終的に欲しい画像になるような場所にバクテリアの位置を投影できるよう、20秒ごとにフィードバックループをセットした。

 バクテリアが過密状態になった場所は、明るくなって速く広がり、バクテリアがあまりいないところは暗くなり広がりも遅く、より多くの凝集塊ができる。

 遺伝子操作されたバクテリアが、自ら選択して表面にくっついたりくっつかなかったりするのには、別の受動システムがあるという。だが、動きによって、バクテリアは自分の位置をより速く決めている。

 大腸菌は見事に統制されていることには驚きを覚える。

 将来的に、光に反応するバクテリアが、顕微鏡マシンを動かす動力になったり、実用的な生きたレンガとして3Dプリンターになる可能性も見えてきたかもしれない。

References:elifesciences/ written by konohazuku / edited by parumo
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