秋から冬にかけて発症するうつ病「季節性情動障害」発症のリスクを高める遺伝子が特定される(米研究)
ヒトゲノム計画から得られた圧倒的な量のゲノム情報は、遺伝子と病気の関係についての理解を飛躍的に進めるだろうと期待された。
しかし現実には、たった1つ、あるいはごく少数の遺伝子だけで理解できる病気はごく一握りであって、多くの病気はさまざまな遺伝子が少しずつ関与することで発症することが明らかになっている。
つまり病気の解明には個々の遺伝子のみに着目するのではなく、マクロ的に調査する必要があるということだ。そのための手法がゲノムワイド関連分析というものだ。
そのゲノムワイド関連分析によって、季節性情動障害の症状の発症に大きな役割を果たしているかもしれない遺伝子が特定された。
・季節性情動障害とは?
季節性情動障害(SAD)とは、季節性うつ病とも呼ばれるうつ病の一種で、ある季節になると気分が落ち込んだりと、気持ちに変調をきたす障害のことだ。
日本や西洋では日が短くなる秋や冬に発症して、春になると治るというのが典型的なパターンである。
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・季節性情動障害のリスクを高める遺伝子
アメリカ・ジョンズ・ホプキンス大学医学部のジェームズ・ベネット・ポタシュ(James Bennett Potash)氏らは、特定の遺伝的変異体がこの症状と関係しているのかどうかを調べるために、ゲノムワイド関連研究を実施した。
今回の研究で対象となったのは、SADを患うアメリカ人の1380名とそうでない2937名である。
その結果、SADのリスクを高める遺伝子ZBTB20が特定された。
これまで季節によって気分が落ち込む症状があることは知られていたが、今回の結果はその裏付けとなる。
日が短くなるにつれて気分が塞ぎ込むかどうかは、その人の遺伝構成によって部分的に決定されているということだ。
ZBTB20はマウスの実験によれば、あるタンパク質の設計図であり、概日リズムや日没の早まりに体を調整する機能と関係している。

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・うつ病の治療法の難しさ
なお、あらゆる研究と同様、この研究にも限界があり、結果は決定的なものではない。
まずより大きなサンプル数でも同じ結果が得られるかどうか確かめる必要がある。これを実施して、今回の結果が確かであることを確かめねばならない。
2つ目に、ZBTB20の変異体が脳機能の変化とどのように関係しているのか確かめる必要がある。この遺伝子が変化することで、気分や行動にどのような変化が現れるのか調査しなければならないのだ。
「うつ病は最も一般的な重い精神疾患です」とポタシュ氏は話す。
「いい治療法がありますが、それが効かない患者もかなりいます。だから、もっと優れた治療法を開発しなければならないわけです。病気の原因である脳の本質的なメカニズムを解き明かす研究は、その手助けとなるでしょう」
この研究は『Translational Psychiatry』に掲載された。
References:Genome-wide association study identifies gene linked to seasonal affective disorder/ written by hiroching / edited by parumo