“ゲスの極み”を岡田准一、黒木華、妻夫木聡らが演じる異色ホラー『来る』

まいじつ

“ゲスの極み”を岡田准一、黒木華、妻夫木聡らが演じる異色ホラー『来る』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『来る』

配給/東宝 12月7日よりTOHOシネマズ新宿ほかで全国公開
監督/中島哲也
出演/岡田准一、黒木華、小松菜奈、松たか子、妻夫木聡ほか

先ごろ外国人との結婚を発表した女優・中谷美紀の代表作『嫌われ松子の一生』(06年)や、松たか子主演のヒット作『告白』(10年)などで知られる鬼才・中島哲也監督が初の“本格的ホラー”に挑む話題作。豪華キャストのほとんどが好感度俳優たちで、そのイメージを裏切る役柄にハメ込んでいるあたりが、鬼才の鬼才たるゆえんか。

オカルトライター・野崎(岡田准一)は、身の回りに起こる超常現象が、妻・香奈(黒木華)や幼い娘に危害が及ぶことに頭を悩ます会社員・田原(妻夫木聡)の相談を受ける。野崎は霊媒師の血を引くキャバ嬢・真琴(小松菜奈)を紹介するが、手に負えず、彼女の姉で最強の霊媒師・琴子(松たか子)を呼び寄せるが…。

『エクソシスト』(73年)か『ポルターガイスト』(82年)的な内容だが、“神VS悪魔”みたいな意識の希薄な日本人には、今回の“民間伝承に由来する化け物”という設定の方がしっくり“来る”!

一番怖くて面白いのは“人間”

とはいえ、監督の狙いは「一番怖くて面白いのは“人間”」というコンセプト。そのために、前記俳優たちの善人イメージをブチ壊してゆく。人は皆、ダークな部分を抱えている、とばかりに。

岡田准一なんて、これまでの“義に生きる硬派二枚目”的印象を完全払拭。キャスト表を見なければ、彼とは分からないほど、不精ヒゲを生やして煙草スパスパで毒づくゲスの極みみたいなキャラだ。妻夫木だって、好青年役がほとんどだが、今回はネット上で理想のイクメン・パパの虚像を演じているだけで、実際は育児放棄に近い身勝手男(こういう輩は意外と多い)。黒木だって、おとなし目の良妻モードは表向き、育児ノイローゼでアルコール依存、部屋は荒れ放題、夫とは仮面夫婦状態で、不倫に走り、学者に抱かれ、背徳の肌をさらす若い母親役だ。黒木はテレビ放映中のドラマ『獣になれない私たち』で、元恋人の家にいつまでも居着き、怠惰な生活を送る困ったパラサイト女を好演しており、急速にイメージ・チェンジに挑んでいる。いいことだ。清純派は3日で飽きる、と言いたい。

クライマックスは全国の霊媒師が田原家およびその周辺に終結し、一大決戦? という禍々しい展開だが、これ自体が、ホラー映画、オカルト映画の壮大なパロディー? と思うほど。やはり、中島作品は一筋縄ではいかない。何だかキツネにつままれたような、そして夢に出てきそうな作品である。『来る』という直截な題名もイマジーネーションを喚起する。

果たして、お客は「来る」か?

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