『西郷どん』最終回が“神回”となった演出の妙とは?

日刊大衆

『西郷どん』最終回が“神回”となった演出の妙とは?

 鈴木亮平(35)が主演した大河ドラマ西郷どん』(NHK)の最終回が、絶賛されている。NHKの木田総局長は定例会見で「素晴らしいドラマを作ってくれた」と賛辞を送っていた。局の人間が公の場で称賛するとは相当なことだ。平均視聴率は12.7%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と大河ドラマ史上3番目の低さで、時代考証の甘さなども指摘された作品だったが、あまりにも見事だった最終回のおかげで満足度は高かった。まずはその内容を振り返ってみよう。

 自身の死に場所として、故郷の鹿児島を選んだ西郷隆盛(鈴木亮平)。宮崎の延岡から鹿児島の城山まで14日かけてたどり着き政府軍に抵抗するものの、劣勢が続き残りの兵士の数は300人程度になっていた。そして城山に立てこもった西郷のもとに、総攻撃の命令をくだしたという手紙が届く。その手紙は大久保利通(瑛太/35)からのもので、西郷の降伏を条件にその命は助けるという、一文が書かれていた。隆盛は手紙を破き、降伏しないという道を選ぶ。そしていよいよ、最後の戦いの幕が開くのだった……。

 最後の戦闘を前に、「チェストー、気張れー!」とお決まりの名ゼリフで仲間たちを鼓舞する西郷の姿、そしてその死を受けて、「吉之助さぁ」と叫ぶ大久保利通、2人の姿にグッときた。ほかにも西郷の死を悼む人々の姿がしっかり描かれていたことで、涙腺は崩壊。島津久光(青木崇高/38)や徳川慶喜松田翔太/33)、勝海舟(遠藤憲一/57)、さらには愛加那(二階堂ふみ/24)らの懐かしいキャラが再登場し、それぞれが西郷に想いを馳せ、感動を呼んだ。西郷隆盛という男が、多くの人を愛し、多くの人に愛されてきたことを表す、素晴らしい最終回だったのではないだろうか。

 しかし、最も感動的だったのは、大久保利通が自身の死に際に西郷を回想するシーンだ。死にゆく大久保が思い出したのは、西郷と一緒に薩摩を出ていく場面だった。これは第13話のラストシーンだったが、この第13話をあらためて考えるとさらに涙が止まらなくなる。

■ラストシーンに込められた思い

 実はこの第13話では、なんとしても大久保利通を江戸に連れていき薩摩藩の政治の中心に加えたいという西郷と、自分の力で江戸に出たいという大久保が、かつてないほどに衝突する回だった。その後、2人は仲直りして、ともに薩摩を出ていくのだが、まさにその場面を大久保は死に際に思い出していたのだ。

 仲違いはしてしまったが、あのときのように再び西郷と分かり合えたら……。そんな大久保の心情がくみ取れた。そう考えると最終回で西郷が降伏しないと聞いた大久保が、激しく取り乱したことにも納得がいく。最近は敵役として描かれていた大久保利通の目線が加わることにより、見事に感動を増幅させたのだ。

『西郷どん』は戦争に勝っても、明治維新を成功させてもカタルシスがなかった。むしろ西郷隆盛や大久保利通の「哀しさ」を描いた、珍しい英雄譚だった。その最終回も切ない展開だったが、『西郷どん』ファンはむしろ大満足だったのではないだろうか。そしてまた、「チェスト、気張れー!」と声をかけてもらえたような、元気になれる最終回でもあった。この『西郷どん』の最終回は、大河ドラマファンの間で当分、語り草になるはずだ。(ドラマライター・半澤則吉)

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