あのかわいらしい鳥に一体何が?シジュウカラが他の鳥を襲い脳を食べていたことが確認される(英研究)
スウェーデンの国鳥でもある、マダラヒタキ(学名 Ficedula hypoleuca)という小さな鳥は、餌を求め、子供を作るためにアフリカのサブサハラからヨーロッパへと大旅行を行なっている。
いつもなら特に問題なくヨーロッパに渡り、数ヶ月後には子供を連れてアフリカに行く。
ところが最近になって、シジュウカラと鉢合わせするようになり、彼らの営巣地が占拠されているというケースが確認されるようになってきた。
シジュウカラはマダラヒタキを追い払うだけでなく、彼らを襲い、殺して脳を食べることすらあるという。
この陰惨な事件が起きるようになった理由は何なのか?
どうやら地球温暖化と関係があるようだ。温暖化により両種の繁殖の時期が重なってしまったのだ。
・陰惨な事件の裏側にある温暖化
シジュウカラは通常マダラヒタキよりも2週間早く繁殖を始める。ところが温暖化のせいでその時期が重なりつつあるようだ。
シジュウカラは1年中ほぼ同じ地域にとどまる鳥で、ヨーロッパ全域に生息している。一方、マダラヒタキは渡り鳥で、アフリカとヨーロッパを行き来する。
1980年代以降、春が以前より暖かくなったことが原因で餌となるムシが増える時期が早まり、彼らの4月の渡りのシーズンが少しずつ早まってきていた。
これ自体はマダラヒタキにとってさしたる問題ではなかった。
マダラヒタキのオス
だがシジュウカラの繁殖シーズンもまた流動的だった。4月の少し寒い時期に繁殖シーズンが遅れるようになったのだ。
このために両者の繁殖シーズンが重なり、縄張り意識的な意味から、暴力的な事態に発展するようになってしまったのだ。
・巣穴不足によりシジュウカラに襲われるマダラヒラキ
イギリスやオランダの営巣地では、木々が非常に若く、巣作りに役立つ穴を開けるキツツキも少ない。このためマダラヒタキとシジュウカラが巣を作り、卵を産める場所が非常に限られている。
ボランティアや専門家が巣箱を設え、繁殖の手助けをしようと務めているが、繁殖シーズンの重なってしまったためにそれでも巣が足りていない。
このために後から渡ってきたマダラヒタキが巣穴に入ろうとすると、先にいたシジュウカラがマダラヒタキを襲い、脳を食べてしまうのだという。
2007~2016年に950個の巣箱から集めたデータによると、マダラヒタキ10羽中1羽がシジュウカラによって殺されていたそうだ。
シジュウカラ
・犠牲になるのはあぶれたオスなので生息数に影響はない
研究の筆頭著者であるイギリス・エディンバラ大学のジェルマー・サンプロニウス氏によると、マダラヒタキは長距離飛行に有利になるように、体が小さく軽く進化してきたという。
このため、空中でならシジュウカラと互角に渡り合えるものの、地上に降りてしまうと分が悪くなる。
一方、シジュウカラの方はマダラヒタキを食料源にしているようだ。可愛らしい姿とは裏腹に、シジュウカラは気性が荒く、このような攻撃的な行動は珍しいことではないという。
マダラヒタキにとっては不幸中の幸いであることに、犠牲になっているのは到着が遅れて、交尾する相手がいない、あぶれたオスであることが多いようだ。
そうしたオスはいずれにせよ子供を残さないことが多いため、今のところこの現象によってマダラヒタキの生息数に大きな影響が出るといったことはない。
マダラヒタキのメス
・温暖化が動物の行動パターンに与える影響を詳しく調査すべき
だが今後もこのまま続くかどうかは誰にも分からない。状況が一変して、マダラヒタキの個体数が減少に転じる可能性だって否定できないのだ。
サンプロニウス氏はこの件について、温暖化が動物の行動リズムに与える影響を調査しなければならない理由を示す格好の事例だと話す。
環境の変化に対して動物たちが示す反応を理解することは、生物の脆弱性を正確に把握するためには必要不可欠なことだそうだ。
この研究論文は『Current Biology』に掲載された。
References:For these birds, climate change spells a rise in fatal conflicts -- ScienceDaily/ written by hiroching / edited by parumo
追記:(2019/1/16)本文を一部訂正して再送します