「いだてん」第4話振り返り「Damm shit!(クソったれ!)」のインパクトがすごい大森安仁子って何者?
「いだてん」第4話が放送されました。前回、マラソンに魅入られた四三は本格的に走る楽しさに目覚め、今でいう陸上部の「徒歩部」に入部。オリンピックの予選ともいえる羽田での大運動会に備えて練習に励みます。
「いだてん」第3話振り返り。「不如帰」の風評被害と赤ゲットの由来についてそんな中、店で部の仲間たちと豚鍋をつついていた四三が偶然見かけたのが、男性と連れ立って店に入ってきた外国人女性(演:シャーロット・ケイト・フォックス)。この女性、のちに日本初のオリンピックチーム監督となる大森兵蔵の妻なのですが、第4話ではほんの少しの登場シーンしかなかったにも関わらず、印象に残るキャラクターでした。
竹野内豊演じる夫の兵蔵が英語交じりにしゃべっていると逐一日本語に訳し、そんなに訳さなくていいから、と言われると「Damm shit!(クソッタレ!)」と返す。なかなか強烈かつチャーミングな女性として描かれています。
大森兵蔵の妻・大森安仁子ドラマの中でも「安仁子です」と名乗っていましたが、もちろんもともと和名だったわけではありません。彼女はアメリカのミネソタ州で名門の家に生まれました。名前はアニー・バローズ・シェプリー(Annie B.Shepley)。
シェプリー家はイギリスから来た開拓民で、裕福でした。アニーは画家を夢見て勉強し、父の死後は親族の支援で画家に。
アニーは絵に集中するために家政婦を雇おうと、国際YMCAトレーニングスクールに募集をかけます。その家政婦の職に応募してきたのが、当時その学校に留学していた大森兵蔵だったのです。このときアニーは49歳、兵蔵は30歳。およそ20も年の差がありました。
兵蔵は夏休みの間だけ家政婦として働きますが、彼は文化も違うアニーの口に合う料理が作れない。家政婦として役に立てないと感じた兵蔵はすぐに辞めようとしますが、アニーはなぜか兵蔵が気に入り、別の料理人を雇って兵蔵は使用人として働けるようにします。
年の差と国籍の違いを乗り越え結婚、日本に帰化夏休みの間だけ雇い雇われの関係だったはずの二人は、すぐに惹かれあい、やがて愛し合うようになります。
アニーの家は名門。相手が外国人でなおかつ使用人なんて、と当時地元では大騒ぎになり、新聞にまで取り上げられたようです。使用人とはいえ兵蔵も実家はとても裕福なのですが……。
生涯を乗り越えて1907年にアメリカで結婚した二人。日本の兵蔵の家でも、相手がアメリカ人女性で19歳も年上だということで大反対されたようです。
ここまででもアニーが昔の女性にしてはかなり度胸のある、進んだ女性のように思えますね。彼女は兵蔵とともに日本へ渡り、帰化してここで「安仁子」という名前を得ました。
夫の死後も日本に残る安仁子は19歳年上でしたが、亡くなるのは夫の方がはやく、結婚からわずか数年のちの1913年に亡くなります。
夫がいない日本にいても仕方ないと帰国すると思いきや、安仁子は日本に留まりました。すでに1911年には日本国籍を取得していたのです。
安仁子は私財を投じて福祉事業を行い、絵画の制作も続けています。また日本の古典文学作品の英語翻訳にも取り組んでいたとか。
夫の兵蔵は1913年、オリンピックから帰る途中で病に倒れ亡くなりますが、おそらく「いだてん」でもそのあたりは詳細に描かれるでしょう。この夫婦の物語がどう展開するのか、とても楽しみです。
いだてん~東京オリムピック噺~日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan