生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその3「二つ枕」

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生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその3「二つ枕」

杉浦日向子さん。「江戸」を少しでもかじったことのある方なら、誰しもが彼女の名をご存知でしょう。

お江戸マンガを描かせたら右に出る者なしのマンガ家でありエッセイストであり、日本を代表する江戸風俗研究家であった杉浦さん。若くしてこの世を去った彼女ですが、昨年11月に生誕60周年の節目を迎えられました。

今回はそんな記念すべき節目の年を祝して、名作ばかりの中からオススメのマンガ作品「二つ枕」をご紹介します。

これまで紹介した作品はこちらから

生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその1「百日紅」

生誕60周年!今こそ読みたい杉浦日向子のオススメ江戸マンガその2「百物語」

吉原の遊女と客のひきごもごも

本作は、吉原遊廓という超特殊な疑似恋愛空間で繰り広げられる女郎と客のひきごもごもを描いた作品です。ある夜は客が付かずにお茶を挽き、ある夜はまわし部屋で5人を同時に相手し部屋から部屋へと走り回る。

そんな女郎たちのそれぞれの夜が一話完結で描かれます。ヤキモチ焼いたり焼かれたり、親に勘当されたダメンズほど可愛くなってしまったり・・・。

思いのままに生きる事のままならない鳥籠の女郎と男の喜怒哀楽、素直じゃない不器用なやりとりや駆け引きが大人の読者に突き刺さり、思わず「クーッ!」と唸ってしまいます・・・。

浮世絵好きにはたまらない絵柄

この作品の特色は、作品によって様々な浮世絵師に絵柄を似せている事です。

例えば吉原デビューのウブな青年の生真面目な心を少しずつほどいてゆく女郎の夜を描いた「初音(はつね)」。

この作品は江戸中期の錦絵の始祖・鈴木春信風。春信が描いたような可憐な少年少女風の絵柄が可愛くて、思わずキュンキュンしてしまいます。

打って変わって「麻衣(あさぎぬ)」という作品は文化文政期に美人画で人気を博した渓斎英泉風。見てください、この色男の切れ長の目つき。

ゾッとするほどの色気がありますよね。勘当されたワガママ色男とちょっと大人な美人女郎のじりじりするやりとりが、絵柄の効果でハッとするほど印象的になっています。

他にも、「雪野(ゆきの)」という作品は柔らかで上品な喜多川歌麿風。

「萩里(はぎさと)」は恐らく歌川一門風。基本は初代豊国風で、コマによっては国貞風にも見え、国芳の春画に構図が似ている箇所も。

ちなみに個人的なお気に入りはこの「萩里」。皆さんもぜひ手にとって、お気に入りの話を見つけてみてくださいね。

杉浦日向子「二つ枕」ちくま文庫

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