“メキシコ美人と3P”に興じる老いてお盛んイーストウッド最新作『運び屋』

まいじつ

“メキシコ美人と3P”に興じる老いてお盛んイーストウッド最新作『運び屋』

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『運び屋』

配給/ワーナー 新宿ピカデリーほかにて全国公開
監督/クリント・イーストウッド
出演/クリント・イーストウッド、アリソン・イーストウッドほか

ハリウッドの大スターであり、大監督でもあるクリント・イーストウッド。昨年、日本でいえば、米寿(88歳)を迎えたものの、老いてますますお盛ん。そんなイーストウッドが『グラン・トリノ』(08年)以来、久々に監督・主演した新作の登場だ。ここ10年、『インビクタス/負けざる者たち』(09年)以降の監督作の多くに衰えが見えており、長年のファンとしては目を覆うばかりだった。それなのに、一部の評論家を含め、過剰な〝神扱い〟はいかがなものか。『ハドソン川の奇跡』(16年)なんて凡庸以外の何物でもなかった作品だもの。晩年の黒澤明もそうだったが、誰か言ってやらないと。

退役軍人アール(クリント・イーストウッド)は、自分の仕事にかまけ、娘のアイリス(アリソン・イーストウッド)ら家族を長年疎んじてきた報いで、今は孤独な日々を送り、金にも困っていた。そんな中、不審な男から、車の運転だけで金になる、と誘われるが、それは、メキシコから流通する大量の麻薬の〝運び屋〟だった…。

クリント・イーストウッド娘の悲劇

まるでオレオレ詐欺の〝受け子〟みたいな軽い気持ちで悪事に手を出し、晩節を汚す主人公がサミシイ。娘役のアリソンは、名前から察しがつくように、御大の愛娘。かつて、刺激的で異常な作品を連発していたころのイーストウッド作品『タイトロープ』(84年)でアリソンは本格映画デビューをしている。当時11歳の彼女は、今回と同じく娘役だが、娼婦連続殺人事件を追う男やもめ刑事が、性風俗の闇にハマって変態プレイにも走るトンデモ映画(ゆえに面白い!)で、何とアリソンは、賊に手錠をハメられ、レイプされたりもする役! ローティーンの娘にこんな役をやらせるイーストウッド(クレジットは制作だが、実質は監督みたいなもの)は尋常じゃない。娘の反応を楽しんでいたんじゃないか、とゲズの勘ぐりを入れたくなるほどだった。

35年ぶりの父娘共演。父を絶対許せない、とする娘と和解できるのか? ヤバい仕事でドジを踏み、麻薬組織に損害を与えたこの老骨はタダで済むのか? 展開としては〝甘い!〟のが不満だが、この憎めない〝幸せな〟ジイサンぶりは〝実録イーストウッド〟か。

最もイーストウッドらしいシーンは、そりゃもう、メキシコの麻薬王の誘いを受けて、彼の本拠で、メキシコ美人をはべらせて〝3P〟させてもらう接待シーンだろう。結構ニヤけた顔して〝据え膳〟を食うのだから、大したものだ。御大のソコに親しみが湧くね。どうやら股間の〝マグナム銃〟は健在。私生活では、20代の新恋人ができた、とか報道され、艶福家の面目躍如ではある。

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