「台湾の雑肉屋台」《新井見枝香コラム・本能めし4》 (1/2ページ)

日刊大衆

 私は燃費が悪い。人の倍以上食べないと、腹が減って動けなくなってしまう。もたれることは滅多にないので、消化はできるが、吸収が悪い胃腸なのだと分析している。

 だからあのコンニャクも、うまく吸収されなかったのだ。そもそもコンニャクは芋からできているくせに、ほとんどカロリーがないという。そんなわけはなかろう。つまりコンニャクも、吸収されるのが得意ではないのだ。

 念のために説明しておくが、ここで言うコンニャクとは、サービスエリアで売っている串に刺さった玉こんにゃくではなく、「ほんやくコンニャク」のことである。食べるとどんな国の言葉でも理解でき、口から出る言葉は自動的に翻訳されて伝わるという、有名なドラえもんの便利道具だ。韻を踏むためにコンニャクで製品化したのだろうが、吸収が悪い人のことも考えてほしい。

 おかげで私の語学力は、何を言っているのかは解るが私の言葉は全く変換されない、という中途半端な状態にある。

 店頭で外国人から問い合わせがあれば、何の本を探しているかは分かる。だが、それがあるかもしれないけれどないかもしれないことや、似た本があるから見てみるか? といったことを日本語で話しても全く伝わらず、「フォローミー!」とジャンヌダルクになって、棚前まで引っ張っていくしかない。

 先日台湾を訪れた際、夜市の外れの街路樹の裏に、ひっそりと賑わう屋台を見つけ、フラフラと近付いた。

 日本のガイドブックに掲載されるような人気店は、基本的に日本語が通じる。だがその屋台のまわりには、明らかに地元の人しかおらず、日本語で「メッチャオイシイヨ」などと話しかける商売っ気もないようだった。種類豊富な茶色い肉総菜が、台の上で特に仕切られることもなくドビャッとぶちまけられていて、客が指差せばおじさんがそれをトングでつかみ、トトトンとひとくち大にカットしてポリ袋に放り込むシステムらしい。その茶色い海の中で、私は最終的に3つのゾーンを指差した。片っ端から尋ねても、料理名はわからない。だが私の脳は、コンニャク効果で「これ新井が好きなやつネ」「これも新井きっと大好きネ」という風に聞き分けることができ、そしてそれは、ことごとく当たりなのだった。

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