「ゲスな自分をありのまま書いた」住所不定無職の作家が描く波乱の半生 (2/3ページ)

新刊JP

――これまでに書かれた作品はいずれもフィクションでした。なぜ今回実体験を書こうと思ったのでしょうか。

赤松:質問の答えになっているかわからないのですが、当初はここまでさらけ出すつもりではなかったんです。

東日本大震災の被災地で土木作業員として働いていましたから、その時の体験を基にして「土木作業員から見た被災地」を書きたかった。実際初稿の段階ではその話が9割以上を占めていました。

――完成した作品とはややテイストが違いますね。

赤松:初稿を読んだ編集者から「土木以外の話も知りたい」と。例えば、「被災地に行った理由」として少しだけ入れていた、境界性パーソナリティー障害を持った娘さんのことが気になる、と言われました。

本当は、娘についての話をするのは、今こうして取材でお話しするだけでも体が震えるくらい辛いことなんです。当然書くのも痛みを伴うのですが、そういう意見をいただいたので、もうこれ以上は何も出ないというくらい書いたつもりです。

――結果としてご自身の人生を恥の部分までさらけ出すことになってしまったと。

赤松:そうですね。ただ、後日談がありまして、自分としてはすべて書き尽くしたつもりでいたのですが、読んでくださった作家の寮美千子さんが丁寧な感想文を送ってくださったので、お礼に電話をしたんです。

そうしたら「あんた、書いてないことがあるでしょう」と。

――まだ何かあるだろうと。

赤松:私としては「えっ?」という感じです。ただ、この小説の中でいうと、境界性パーソナリティー障害で入院していた娘が、強制退院させられてから二年ほど、神戸のワンルームマンションに父親の大西と閉じこもって暮らすことになるのですが、寮さんがいうにはその期間ことが全然書いていないと。実は寮さんとは私が作家デビューする前から親交があったのです。いろいろなことがあったでしょうと。他人は何とでも言えますよね(笑)。

――それは次回以降のテーマになるのでしょうか。

赤松:どうでしょう。ただ、この小説を書いたことで私自身の書きたいテーマが変わってきたのを感じています。

――どのように変わったのでしょうか。
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