「ゲスな自分をありのまま書いた」住所不定無職の作家が描く波乱の半生 (3/3ページ)
赤松:これまで受けた取材では、平成になってから生まれた社会構造の変化、具体的には「格差社会」や「非正規雇用」などをテーマにしていきたいと言っていたんです。
昔は会社を経営していたのですが、その会社が立ち行かなくなってからは、東日本大震災の被災地で土木作業員や除染作業員。それもあかんようになったら東京で風俗店の呼び込みとかバスの誘導員をやって、格差社会の実情や非正規雇用者がどんな目にあっているかを嫌というほど見てきたので、それを書こうと思っていた。
でも、それって私じゃなくても色々な方が書くと思うんです。だから私はそこから降りて、今後は色と欲に狂った人間を書こうと思いました。この小説でいう大西のような。
――「色と欲に狂った人間」というところで、病院に運び込まれた娘が、大西がすぐに駆けつけなかったことを非難する場面で、大西は自身が愛用する勃起薬の効能を知人に説いていたために到着が遅れたのを、「仕事をしていて遅れた」と嘘をつくのが滑稽で印象的でした。赤松:私自身の体験をそのまま書いているだけなので、滑稽さを意識したわけではないんです。滑稽だというなら、それは私の生き方が滑稽だということでしょう。
――娘の「ボダ子」についてですが、大西は彼女が境界性パーソナリティー障害を持つことになった原因が自分にあると考えているところがありますが、それは自分を責めすぎなのではないかという気もします。赤松:いや、100%私(大西)でしょう。お金を渡してさえいればいいという親でしたから。
――娘の母親にもだいぶ問題があるのではないかと。赤松:それ何て答えたらええの…(笑)
(後編につづく)
著者プロフィール赤松利市さん
1956年、香川県生まれ。2018年、「藻屑蟹」で第一回大藪春彦新人賞を受賞。他の著書に『鯖』『らんちう』『藻屑蟹』。『ボダ子』が四作目となる。