へんてこアート入門 『はじめての古美術鑑賞-絵画のテーマ-』編 (3/5ページ)
これは、『源氏物語』の第二十帖「朝顔」に登場する有名なシーンを描いた作品で、「光源氏の浮気性を知った紫の上の機嫌を取るため、側付きの童女たちに雪玉遊びをさせている図」です。
源氏物語朝顔図(部分)土佐光起筆 1幅 日本・江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
本田さん 本作の下部に注目すると、オスのオシドリがメスに向かって必死にアピールをしている姿が描かれているのがわかります。本作のように「お約束のモチーフ」がテーマの作品は、お約束であるが故に、作者が自己の才能を発露するのに制約があるものです。しかし、江戸時代初期に名手として知られた光起は、物語の内容を十分に理解した上で、オシドリが必死にアピールする姿を盛り込むなど、自分なりの表現を行っていることがよく分かります。
――なるほど。そうした作り手の意図が分かれば、興味を持って鑑賞することができますね。
本田さん 本作は小さめの作品にもかかわらず、執拗なまでに細部を描き込んであるのが特徴です。これも光起の技量の高さを十分に知ることができるポイントです。また、細部までご覧いただくなら単眼鏡がおすすめです。ミュージアムショップで貸し出しをしていますので、ぜひご利用ください。意外と面白くてハマりますよ。
細部までじっくり見ることがより楽しむこつ――企画展をより楽しむためには、どんな点を意識すればいいですか?
本田さん 先ほども述べたように、時間をかけて細部までじっくりと見ていただくことが、何よりも作品理解につながります。他にも、この展覧会では、画題(絵のテーマ)だけでなく、各作品の美しさ・面白さも感じてほしいと考えておりますので、例えば華やかな彩色や対比の妙、墨の微妙な濃淡や筆遣いのスムーズさなど、おのおのの作品の持つ魅力を発見していただきたいです。