大切なのはお金より気持ち。お布施のキャッシュレス化・電子決済に京都仏教会が物申す!

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大切なのはお金より気持ち。お布施のキャッシュレス化・電子決済に京都仏教会が物申す!

報道によると、令和元2019年6月28日(金)、京都府内およそ1,000の寺院が加盟する京都仏教会が会見を行い、拝観料やお賽銭、お布施などに対するキャッシュレス化・電子決済の導入を受け入れない方針を発表しました。

その理由として、同会は(1)決済データの電子化に伴う信者の情報漏洩リスク、(2)決済に伴って発生する手数料により寺院の収益が課税対象と見なされる懸念、そして何より(3)宗教行為すなわち信仰の本質が損なわれることなどを挙げ、加盟する他の寺院に対してもキャッシュレス決済を導入しないよう呼びかけていくそうです。

※参考:おさい銭、お布施…「キャッシュレス反対」 京都仏教会

……まぁ、かつて「古都保存協力税」の導入に反発して京都市と一悶着(※1)起こした京都のお寺さんですから、本音は「ふところ事情をお上に知られたくない≒税金を納めたくない」と言ったところかも知れませんが、確かに電子化による情報漏洩のリスクがゼロとは言えません。

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(※1)ざっくり言うと、京都市が寺院から税金を取ろうと古都保存協力税を導入したところ、仏教関係者が寺院から観光客を締め出し(拝観停止)、観光資源の損なわれた京都市が降参した一件(昭和六十1985年7月10日~同六十二1987年5月1日)。

しかし、筆者としてはそれ以上に信仰の本質が損なわれてしまうリスクの方を強く懸念します。

「気持ち(信仰)」がなければ意味がない

と言うと、中には「お金は払っているんだから、現金だろうが電子マネーだろうが同じでしょ?」と思われる方もいるでしょうが、お寺さんに納めるお金というものはサービスの対価ではなく、あくまでも信仰にもとづく宗教行為の媒介物です。

平たく言うと、お金でもお供物でも、そのやりとりに心がこもっていなければ、いくら出そうが積み上げようが、何の意味もないのです。

大事なのは、金額じゃないんです。

その感覚がキャッシュレス決済のお手軽化によって薄れてしまうことを、心あるお坊様方は憂えておいでなのだと思います。

お金を払っているんだから、どんな秘仏であろうが見せるべきだ」

来てやっているんだから、インスタ映えのために境内のどんな場所でも立ち入る権利がある」

カネを落としてやっているんだから、お客様としてもっと丁重に扱え。どんな要望でもありがたく受け入れて、もっとサービスを改善しろ」

……とまぁ、さすがにここまで高慢ちきな参詣者もそう居ないでしょうが、これらに準ずる手合いは、残念ながら散見されます。

※近ごろ(平成最後~令和最初)の御朱印ブームに伴う諸々のマナー問題も、こうしたところに端を発しているのではないでしょうか。

何でも合理化すればよい、カネさえ払えば文句なかろう……そういう敬虔さに欠ける態度の片鱗が、神社仏閣などの宗教施設におけるキャッシュレス導入に窺われます(単なる思い過ごしならいいのですが)。

いつの世だって、仏さまや、仏さまにお仕えする坊様てなぁ、ありがてぇもんだ。

昨今、何かにつけて便利さ快適さばかりを追求する世の中ですが、こうした「味気なさ」に違和感を覚え、神仏の前では敬虔に我が身を慎む日本人の美徳が、末永く受け継がれていくことを心より願っています。

※参考文献:
井上章一『京都ぎらい』朝日新書、平成二十七2015年9月11日

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