【本好きのリビドー】 (1/3ページ)

週刊実話

【本好きのリビドー】

◎悦楽の1冊

『亡国スパイ秘録』佐々淳行 文春文庫 700円(本体価格)

★スパイ事件を見てきた著者の遺言の書

 日大アメフト部の悪質タックル問題が浮上した折に、驚いたのは理事長の事件への対応を巡る一連の騒動より、同大に「危機管理学部」が存在することだった。今となっては民主党政権下での「国家戦略局」に通じる、どこか台なし感が一瞬漂ってしまったが、ともあれ、その「危機管理」という言葉を日常語として定着させたのこそ、昨年、惜しくも亡くなられた佐々淳行氏。

 警察、防衛庁を経て内閣安全保障室の初代室長を務め、長く治安対策の最前線にあり続けた圧倒的なキャリアで、有無を言わせぬ説得力を伴わせる著書の数々はいずれ劣らぬ無類の面白さ。まさに“腕も立てば筆も立つ”を地で行く著者だっただけに、本書が遺作となるのが返す返すも残念でならない。『朝まで生テレビ』等の討論番組に登場する際も、常に明晳な議論を冷静に展開していた姿が懐かしい。

 その著者が歯がみして悔しがらんばかりなのが、いまだスパイ防止法ひとつ制定されぬままの日本の現状だ。併せて、弱いウサギは長い耳を持たねばならぬはずが、情報機関の設置を自ら禁じ、あるいは怠ってきたためにどれだけ不可視の弊害が累積されてきたか。すべて自ら経験した事案を叩き台に語られ、次第に読むのが辛くなるほど。

 危くゾルゲ事件に連座する恐れのあった父の思い出に始まり、戦後明らかになったさまざまなスパイ案件の機微に触れる筆致がとにかく生々しいが、やはり特筆すべきは中曽根内閣のブレーンと呼ばれ、山崎豊子の小説『不毛地帯』の主人公のモデルと囁かれた元大本営参謀だろう。周到に証拠を固めた上で著者は彼を旧ソ連のスリーパー(潜在協力者)だったと断じるが…依然信奉者は多いのが解せない。何故?
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】

 村田諒太再び戴冠!
 7月12日に大阪で行われたWBA世界ミドル級タイトルマッチの村田は強かった。2回TKO勝ち。対戦相手はボコボコになっていた。

 テレビなどに出演する村田はクレバーさが際立ち、自分を客観的に分析できる、どこか哲学的な人物でもある。一体、村田諒太とはどういう男なのか―。

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