「第63回夏の甲子園」金村義明擁する“逆転の報徳”が荒木大輔に襲いかかる! (2/2ページ)

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 早実は続く8回表にも先頭の2番・高橋公一の四球をきっかけに1死三塁とし、4番・小山寛陽がスクイズ。ダメ押しとも思える4点目をもぎ取った。荒木の調子から判断して、これで“勝負あり”。事実、金村をはじめとする報徳ナインもこれで「負けた」と観念したという。

 それでもその裏、報徳は疲れの見え始めた荒木から9番・東郷洋志と1番・高原広秀が連打し、1死一、二塁のチャンスを作る。続く2番・大谷晴重の当たりは二塁正面のゴロとなったが、併殺崩れの間に二塁ランナーの東郷が好走塁を見せ、本塁を陥れることに成功。ようやく1点を返したのだった。金村は9回の早実の攻撃を3者凡退に打ち取り、いよいよ最後の攻撃に望みを託すこととなったのである。

 9回裏、報徳の先頭打者は金村だった。そのバットから放たれた打球は二遊間で高く弾み、執念の内野安打となる。続く5番・西原清昭が死球でつなぐと場内の雰囲気が少しずつ変わり始めた。地元・報徳への声援が増していったのだ。ここで岡部道明が三塁線突破の適時二塁打を放ち、2‐4と詰め寄る。そして1死後、打席には途中から守備要員で入っていた小柄な左打者の浜中祥道。初球、甘く入った直球をキレイに流し打ち。打球は同点適時二塁打となって三塁線を抜けていく。土壇場での同点劇。まさに“奇跡の報徳”が再現されたのである。

 試合は延長戦に突入したが、こうなると流れは報徳にあった。10回裏、2死から金村が左翼線へ二塁打を放つと、続く5番・西原が荒木の投じた2球目の甘いスローカーブをレフトオーバーに打ち返し、ついに決着。5‐4の劇的サヨナラ勝ちであった。

 激闘を制した報徳はこのあと名古屋電気(現・愛工大名電=愛知)の工藤公康(元・西武など)ら、のちにプロ入りする人気実力派の投手たちを次々に攻略。金村は“悪役ヒーロー”になった感もあったが、地元・兵庫にみごとに深紅の大優勝旗を持ち帰ったのである。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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