「第75回夏の甲子園」川上憲伸を擁する名門・徳島商が初出場校に大苦戦 (2/2ページ)

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一見すると快調な投球も、実は回を追うごとに球が上ずり始めているのを実感していたのである。そしてその不安が現実のものとなってしまう。

 8回裏の1死後、徳島商の2番・高松の左中間二塁打で口火が切られる。そこから川上の中越え二塁打を含む長短6連打でたちまち4‐7と3点差に詰め寄られたのだ。すると球場内の風向きが変わる。さっきまで久慈商ナインに声援を送っていた大観衆が、この怒濤の反撃に大盛り上がり。もはや球場全体が徳島商ナインを後押しする状況となっていたのである。

 かたや守る久慈商ナインは完全に浮き足だっていた。2死を取ったものの、代打の真鍋博に一、二塁間を破られる。さらに1番・利光恵司が放ったレフト正面へのライナー性の当たりだった。この打球を捕ろうと突っ込んだ左翼手・村田和幸が折からの雨で濡れた芝生に足を滑らせて転倒するという不運に見舞われ、三塁打にしてしまった。

 ついに7‐7の同点となったのである。この後のピンチは何とか抑えたものの、9回表の攻撃を、これまでの乱調がウソのように勢いを取り戻した川上にわずか6球で片づけられてしまっては、もはや試合は決まったも同然だった。

 迎えた9回裏。徳島商は相手エラーと内野安打で1死一、二塁とすると6番・平山貴郎のバットがこの日、宇部が投じた151球目のスライダーを捕らえる。左中間を深々と破っていく白球。大逆転劇の完成であった。

 この奇跡の大逆転のあと、徳島商はベスト8まで進出した。

(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=

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