「第75回夏の甲子園」川上憲伸を擁する名門・徳島商が初出場校に大苦戦 (1/2ページ)

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「第75回夏の甲子園」川上憲伸を擁する名門・徳島商が初出場校に大苦戦

 まさかの展開だった。それまで夏準優勝1回、春優勝1回を誇る名門校が、野球弱小県から出場した無名の初出場校に大差をつけられていたからだ。7回を終わって0‐7。勝負は決まったも同然だった。

 それは1993年第75回夏の選手権2回戦、徳島商対久慈商(岩手)の一戦。もちろん名門校は徳島商であり、初出場校が久慈商のことだ。しかも徳島商のエースは、のちにプロ野球の中日ドラゴンズのエースとして君臨し、メジャーでも投げた川上憲伸。

 対する久慈商は、今でこそ花巻東や盛岡大付などの甲子園強豪校が知られているが、当時は甲子園で1回勝てばいいほう、というようなチームばかりだった岩手県の代表校。甲子園の戦い方を熟知している徳島商が久慈商を一蹴するというのがほぼ大半の高校野球ファンの戦前の見方であった。

 だが、その様相が試合開始直後に一変する。1回表、久慈商は徳島商のショート・横手照生のエラーをきっかけにチャンスをつかむとスクイズを敢行。この打球処理を焦った川上が本塁へ悪送球して1点を先制。なおも、2者連続の適時打で初回に3点を挙げたのである。かたや名門校とは言っても、この時の徳島商はナイン全員が初めての甲子園。しかも日程の関係で初戦まで間が空いたこともあり、試合勘が戻りきっていなかったのかもしれない。その裏、先制点に気を良くした久慈商のエース左腕・宇部秀人がすんなりと徳島商打線を抑えたことで、試合は完全に久慈商のペースとなっていく。

 その後も久慈商は川上を打ち込み、2回に1点、5回に2点、そして7回に1点を追加。先制・中押し・ダメ押しと理想的な試合運びを見せていく。投げては宇部が小柄ながらもバランスよく速球と変化球を投げ分け、7回まで散発5安打の無得点ピッチング。

 しかもこの日はお盆期間真っただ中の8月15日。両校や両県の関係者以外にも甲子園を楽しみたい高校野球ファンが多く詰め掛けており、こうした観客の多くが甲子園名門校を相手にのびのびと躍動する久慈商ナインに大きな歓声をあげることとなったのだった。

 そんな久慈商の中に1人、不安を感じる選手がいた。ほかならぬエースの宇部である。県大会6試合50イニングを1人で投げ抜いた左肩に、3回ごろから違和感があった。

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