平安時代のストーカー伝説!憎しみから蛇に変身した少女の壮絶な愛憎劇とは?

Japaaan

平安時代のストーカー伝説!憎しみから蛇に変身した少女の壮絶な愛憎劇とは?

いつの世も、男女関係は計り知れないものがあります。とくに昨今だと、ストーカーによって起こされる事件が後を絶ちませんよね。

しかし、ストーカーは現代だけの事件ではありません。平安時代にも、憎しみのあまり蛇に変身したストーカー少女の伝説があったのです。

美青年の修行僧に一目惚れした少女

あるところに清姫(きよひめ)という少女がいました。熊野詣(熊野信仰への参詣)にやってきた安珍(あんちん)という美青年の修行僧と出会った清姫は、彼に一目惚れをしてしまいます。

清姫は夜這いをかけるほど、行動力に溢れていました。そんな清姫に困った安珍は、「熊野から戻ったらあなたの言うとおりにします」と約束してしまったのです。

熊野古道の碑(wikipediaより)

しかし交わした約束を安珍はすっぽかし、熊野詣が終われば清姫の存在を恐れて立ち去ります。騙されたと気づいた清姫は後を追いかけますが、安珍はさらに「人違いだ」と偽り逃げ出すのです。

これには清姫も怒り心頭です。蛇に変身するほどの激しい憎しみに身を包み、さらに安珍を追いかけることに。逃げた安珍は日高川を渡り、道成寺(和歌山県日高郡日高川町にある寺院)に逃げ込みます。

激しい炎で焼き尽くす

事情を聞いた道成寺の僧たちは鐘の中に安珍を匿い、寺の門を閉じます。安珍を追いかけてきた蛇の姿になった清姫はその鐘に巻きつき、怒りの炎で焼き尽くしました。

鐘もろとも焼かれた安珍は、骨も残りません。かなり激しい炎だったのでしょう。その後、入水自殺を図った清姫。

道成寺の本堂(wikipediaより)

2人が亡くなってから、道成寺の僧侶の夢に安珍と清姫が表れ、「法華経で供養して欲しい」と訴えてきます。僧侶が供養すると、2人はやっと成仏できたというお話です。

この物語は元々、法華経の凄さを伝えるエピソードでしたが、時代を経て悲恋物語へと変化していきました。ただ現代の感覚からしたら、清姫はかなりのストーカー気質だと読み取れますよね。

嘘をついた安珍もいけないとは思いますが、一方的な恋愛感情で相手を追い回している清姫の激しい感情には、怖れを抱いても仕方がないと感じます。しかもそのストーカーは蛇にまで変身しているのですから、安珍の恐怖は凄まじかったでしょう。

語られ続ける伝説

この物語の出典は、平安時代中期に書かれた「大日本国法華験記」の中の「紀伊国牟婁郡悪女(きいのくにむろぐんあしきおんな)」というタイトルの説話です。この話にはまだ清姫・安珍という名前は出てこず、清姫のポジションは未亡人、登場するのも若い僧と老年の僧の2人になっています。

有二沙門、一人年若、其形端正。一人年老、共詣熊野、至牟婁郡、宿路辺宅、其宅主寡婦
引用元:法華験記

説話集とは古くから伝わっている話のことなので、蛇になった女性から男が逃げ出したというエピソードが、どこかで伝説としてあったのかもしれません。

鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より 「道成寺鐘」(wikipediaより)

また、平安時代の末期に書かれた「今昔物語集」にも同じような話があります。清姫・安珍という名前がついたのは、鎌倉時代や江戸時代になってからだそうです。

この物語は歌舞伎や能、浄瑠璃などの演目として語られてきました。それほどインパクトがあったのでしょうね。そして「安珍清姫伝説」として有名になり、道成寺では絵巻物を見せながらの説法が今も行われています。

参考サイト

道成寺 法華験記

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

「平安時代のストーカー伝説!憎しみから蛇に変身した少女の壮絶な愛憎劇とは?」のページです。デイリーニュースオンラインは、伝承平安時代恋愛カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧