決死の作戦と兄弟愛!天下一の強弓・源為朝が唯一倒せなかった大庭景義の武勇伝【上】 (4/4ページ)

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ともあれ為朝は、平太と三郎が相模国の住人と聞いて、

「ほう……音に聞こえし坂東武者との手合わせはこれが初めて……そうじゃ、彼奴(きゃつ)らを引目(ひきめ)の矢で驚かしてやろう」

引目とはいわゆる鏑矢(かぶらや)で、朴(ほお)や桐材を蕪(かぶら)のような球形に削り出し、中を空洞に刳(く)り抜いた側面に穴(目)を穿ったもの(鏑・かぶら)を矢の先端につけることで、射放つと目から風が入って高い音を響かせるため、響目(ひびきめ)が転じて引目、蟇目などと呼ばれました。

引目の先に大雁股の鏃が取りつけられている。

通常であればこの引目は先端に鏃(やじり)をつけず、単に音だけ響かせて合図などに用いるのですが、為朝は引目の先に大雁股(おおかりまた。外側に反ったU字形)の鏃を取りつけて、恐ろしい音と殺傷能力を誇示しようと考えたのです。

「……そこにおわすは鎮西八郎と見た。いざ尋常に、勝負!」

「おう、望むところよ!」

三郎と二手に分かれた平太は鞭声颯爽と馬を励まし、強敵・為朝へと挑みかかったのでした。

(※3)通説では右眼となっていますが、ここでは『保元物語』の記述に従っています。
(※4)諸説あり。

※参考文献:

栃木孝惟ら校注『新日本古典文学大系43 保元物語 平治物語 承久記』岩波書店、1992年7月30日
貴志正造 訳注『全譯 吾妻鏡 第二巻』新人物往来社、昭和五十四1979年10月20日 第四刷

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