ヨーロッパの果てで語り継がれる「浦島太郎」そっくりの神話とは (1/2ページ)
メソポタミアの『ギルガメシュ叙事詩』やギリシアの『天地創造』など、世界各地には古くから語り継がれてきた様々な神話がある。日本最古の歴史書といわれている『古事記』もその一種といえる。
ただ、そもそも「神話」とは何なのかという定義は曖昧だ。『世界の神話』(沖田瑞穂著、岩波書店刊)によると、神話とは「聖なる物語である(であった)」であり、人々の間で語られ、そして聞かれていたある話について、それが「聖なるもの」と捉えられていたら、その話は「神話」である、ということができる。
■ヨーロッパの果てに残る「浦島太郎」に似た神話とはたとえば「ケルト神話」というものがある。
ケルト人は、現在のアイルランド人、スコットランド人、ウェールズ人、フランスのブルターニュ地方のブルトン人などの祖先に当たる人々。かつてはヨーロッパ大陸でも勢力をふるっていたが、次第に他民族に圧迫されてヨーロッパの西へ西へと追いやられてしまう。さらにキリスト教化されたので、ケルト神話が比較的多く残っているのは、アイルランドとイギリスのグレートブリテン島西南部のウェールズ地方となっている。
このケルトの神話の一つ、「フィアナ神話」が、日本の浦島太郎とよく似ているのをご存じだろうか。筋書はこうだ。
主役のオシーンとフィアナの騎士たちが森で狩りをしていると、突然西のほうから白い馬に乗った乙女が現れる。常若の国の王の娘、金髪のニアヴと名乗り、オシーンを常若の国へ誘う。
そこでは何日も素晴らしい祝宴が続き、オシーンは3年間常若の国で過ごす。父や友人に会いたくなったオシーンは、そのことをニアヴに話すと「決して白馬から降りないで下さい。あなたの足が土に触れたら、もう二度と私のところへは帰れないのです」と告げられる。オシーンは決して馬から降りないと約束し、常若の国をあとにするが、途中で両足を地面につけてしまう。その途端、目はかすみ、若さは消え、全身から力が抜け、しわくちゃの老人になってしまうのだった。