草刈正雄の人間力「ターニングポイントで、いい出会いに恵まれました」

日刊大衆

草刈正雄(撮影・弦巻勝)
草刈正雄(撮影・弦巻勝)

 60代も後半に差しかかって、もともと苦手だった台詞覚えが、地獄の苦しみになってきました(笑)。以前は自宅で覚えていたんですが、ある友人から「ザワザワしている場所のほうがかえって頭に入るよ」とアドバイスされたんですね。そんなバカなと思いつつ、試しに近所のカフェでやってみたら、これが確かに覚えられる。以来、ドラマや映画があるときは毎日通って台本を広げています。

 あるとき、いつものようにカフェで台本と悪戦苦闘していたら、誰かに「草刈さん」と声をかけられた。ふと顔を上げたら、なんと脚本家の三谷幸喜さんが目の前にいたんですよ。そして、いつものように生真面目な表情で「今度映画を撮るんですけど、出ていただけませんか?」って。こんな形で出演依頼をされることはめったにありません。普通は事務所を通してオファーが来ますからね。

 でも思えば、2016年の大河ドラマ真田丸』のときもそうでした。14年の夏、三谷さんの舞台に出演していた僕の楽屋に、彼がひょっこり来て、「来年の大河ドラマの脚本を書くんですけど、出ていただけませんか?」とオファーを受けたんです。「ぜひお願いします」と、やらせていただきましたが、これが僕の俳優人生の中で大きな存在となった、真田昌幸役でした。

 あの役、そして三谷さんとの出会いは、僕にとって本当に大きかったですね。新しい台本が届くのがあれほど待ち遠しい作品はなかったし、撮影現場に行くのがあれほど楽しい役はなかった。毎日がワクワクドキドキ、『真田丸』は心躍る作品でした。

 そんな三谷さんが脚本を書き、監督する映画が、面白くないわけがない。話しかけられたカフェで、どんな役柄かお尋ねすることもなく、二つ返事で引き受けました。それが『記憶にございません!』という作品です。記憶喪失の総理大臣をめぐるコメディで、僕は政界を牛耳る官房長官を演じています。

■60歳を過ぎてから、こんな充実した日々を送ることができるなんて

 この作品に限らず、僕はあまり緻密な役作りをしないで、その瞬間のひらめきで演じるタイプです。『真田丸』のときも、昌幸がそのとき何歳なのかも考えずにやっていたし、現在放送中の朝ドラ『なつぞら』の泰樹じいちゃん役もそう。ときどき台本にその時点での年齢が書いてあって「あぁそうか、そんな年になっていたか」と、やっと気がつくくらいです(笑)。

 今回の官房長官も、年齢設定があったかどうかも記憶にないんですが(笑)、なにしろ三谷さんが僕を想定して書いたキャラクターだし、僕なりにやって、違っていたら三谷さんが何か言ってくれるだろうと。思う存分楽しくやらせていただきました。

 50年前に上京したときは、まさか60歳を過ぎてから、こんな充実した日々を送ることができるなんて思いもしませんでしたね。

 先日、友人が「面白いところがあるんだよ」と、店内のテレビで古い資生堂のコマーシャルばかりを流すスナックに連れて行ってくれたんです。その中に、僕が17歳のときに出演したCMもあって、若かりし頃の自分と再会しました。いやぁ、自分で言うのもなんですが、美少年でしたね!(笑)あの当時は、かっこいい男性モデルや、すごくきれいな女性モデルがたくさんいました。そんな中、15年もシリーズでCMをやらせてもらえたのは、とてもラッキーなことだったと思います。

 この50年、いろんなことがありました。若い頃にポーンと行ったけど、その後、うまくいかない時期もあった。でも、そこで『真田丸』と三谷さんと出会えて、今がある。本当に幸せですよ。僕はターニングポイントで、いい出会いに恵まれました。

 テレビや映画で僕を見て、「おお、草刈正雄もまだ頑張っているな!」と、皆さんの励みに思っていただけたら、これほどうれしいことはないですね。

草刈正雄(くさかり・まさお)

1952年、福岡県生まれ。モデルとして活躍した後、1974年に映画デビュー。映画『汚れた英雄』、ドラマ『華麗なる刑事』(フジテレビ系)といった作品に主演し、甘いルックスで大人気となる。2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』では、真田昌幸役での独特な演技が大きな話題に。現在、連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)、『美の壺』(NHK-BSプレミアム)に出演中。

「草刈正雄の人間力「ターニングポイントで、いい出会いに恵まれました」」のページです。デイリーニュースオンラインは、なつぞら草刈正雄真田丸三谷幸喜連続テレビ小説エンタメなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る