〈企業・経済深層レポート〉 檀家制度崩壊が致命的 “寺院消滅”の危機 (2/2ページ)

週刊実話

ところが、最近は親族のみで葬儀を行う『家族葬』、葬儀を行わずに火葬場へと直行する『直葬』といった、簡素な葬儀が増えたことで、お布施の相場が下がっています」(同)

 さらにインターネットが普及したことで、お布施額の減少に拍車がかかっているという。
「今までは不透明だったお布施額が、簡単に調べることができるようになり、ここ数年でお布施額の価格破壊が起きています。ネットの大手僧侶派遣業者は、最安値で3万5000円。従来の10分の1ほどにまで下がっているのです」(僧侶派遣業者)

 そもそも、このような僧侶派遣業者が台頭し始めたのは、檀家が減ったことが原因でもある。
「檀家が減ったことで、寺院を手放した住職が増えました。“フリーランスの僧侶”のような形になり、彼らは生活するためにも仕事が欲しい。なのでお布施の金額を気にしていられないのです。地方の寺院は、皮肉なことにこういった同業からも客を奪われているのです」(同)

 檀家制度が崩壊したことで、追い詰められつつある寺院。この流れを止めるためには、どうしたらいいのか。
「そもそも昔は、仏教が日常生活に溶け込んでいました。ただ、1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件以降、組織的な宗教を“危険”だととらえる日本人が増え、若い世代の宗教に対するイメージが悪化しています。その意識を変え、以前のように仏教が身近になることが重要でしょう」(地方寺院の現役住職)

 衰退の流れを止めるのは容易ではなさそうだが、仏教を身近に感じてもらうために従来の型にハマらない斬新な活動を行う寺院や住職が増えている。
「例えば、京都府のある寺院では、観光客向けに僧侶がお寺をアテンドするサービスがあります」(若手住職)

 都内では、「坊主バー」が急増中で注目を集めている。
「このお店は現役住職がマスターを務めていて、お酒を飲みながら住職に相談できることがウリで、若い女性から人気を集めているようです」(同)

 また、寺院だけでなく、IT業界も動いている。
「葬儀、法事、供養などの仏事ごとや、悩み相談などの日常のことで困っている生活者とお坊さんをつなげるマッチングサービスを始める動きも出てきています」(同)

 寺院消滅の気配が高まりつつあるが、これは仏教が新たな地平を切り開くための試練なのかもしれない。

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