鬼邪高校全日制に通う轟洋介くんのこと~ 映画『HiGH&LOW THE WORST』 を見て~:ロマン優光連載146 (3/5ページ)

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話してもくれない人のそばにいようとは普通は思わないし、それなら辻と芝マンが轟に代わって下の者とのコミュニケーションを果たさなければならないのに、奴らは二人でテレパシーばっかだし、こんな自己完結集団ではリーダーとかボスとか鬼邪高を支配するとか以前の問題だ。

 轟にだって仲間を思う気持ちはある。他校生にやられた鬼邪高生のために独りで相手高に殴り込みに行ったりだってする。そこに何も言わなくても駆けつける辻と芝マン。それはいいのだが、轟は自分から殴り込みに行ったなんて言わないし、辻と芝マンは二人でテレパシーしているだけだから、他の生徒は轟の善行を誰も知らないのだ。轟はそういう不器用な男だし、辻と芝マンもたいがいなのだ。

 ハイローシリーズには互いに小石を缶などに投げ合いながら語り合うという儀式が登場する。石を缶に当てることが目的ではなく、互いにまだ打ち解けてないもの同士が腹を割って喋ろうという時に、面と向かって語り合うのも気まずいので、それをごまかすために互いに缶に石とか投げるという行為を挟み込んでいるのだと思う。本篇の主人公花岡楓士雄がそれを轟とやろうと試みたところ、轟は最初の一撃で缶を薙ぎ倒してしまった。こういう空気が全く読めないのが轟という男だ。空気が読めないというか、あそこで自分の投てき能力を全力でアピールする意味がわからない。単なる変な人だ。夜の眼科から出てきて、医者が立ち会ってもないのに眼帯をカッコつけながら捨てるのも変だ。誰も見てないのに何カッコつけてるのだ。実際は楓士雄がこっそり見てたのだが、普通あんな独りでカッコつけてるとこ見られたら赤面するはずなのに、堂々としてるのも変だ。

 轟という男は不良ではない。単なる変人だ。それも、すごくすごく変な人だ。自己完結してて、ナルシストで、コミュニケーション能力に欠けていて、天然ボケの凄く変な変人だ。そんな轟が人たらしの楓士雄と出合うことで、積極的に他人のために動こうとする。それはロボットに人間の心が芽生えるような奇跡的な成長の瞬間だ。

 俺は轟が好きだ。
 体を鍛えてゲームの真似をしているだけで強くなった轟が好きだ。
 単にカッコいいからメガネをかけてる轟が好きだ。
 一撃で缶を薙ぎ倒してしまう轟が好きだ。

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