戸田恵梨香『スカーレット』おばさんくさいヒロインが示す新しい朝ドラの形

日刊大衆

戸田恵梨香『スカーレット』おばさんくさいヒロインが示す新しい朝ドラの形

 連続テレビ小説スカーレット』(NHK)は、早くも今週で4週目。戸田恵梨香が31歳という年齢にも関わらず、15歳のヒロインを演じていることで話題だ。まだ見ていないという人もまだまだ間に合うので、ぜひ見てほしい。というのも、戸田が演じる喜美子が面白すぎるのだ。まずは10月19日の放送を振り返ってみよう。

 大阪の荒木荘で家政婦の仕事をしている喜美子。大久保(三林京子/68)の厳しい指導を受けながらも、仕事を覚えていく。そんなある日、喜美子は雇い主である荒木さだ(羽野晶紀/51)の会社が主催する下着ショーに、新聞記者の庵堂ちや子(水野美紀/45)とともに出かけて……。

 先週の放送を見て思ったことが、「いつもの朝ドラと違う」ということだった。ヒロインの喜美子が、あっさりと大阪に溶け込んでしまったのだ。本来、朝ドラは地方出身ヒロインが、大都市で苦労するシーンが描かれるのが定番。前作『なつぞら』のなつ(広瀬すず/21)は、アニメーターを目指すがテストに落ち、入社後も麻子(貫地谷しほり/33)に目をつけられ、厳しく当たられていた。本来は周囲の優しい人々に助けられ、新しい環境に慣れていくのだが、いかんせん戸田恵梨香が演じる喜美子はいろいろ優秀すぎて、今までのヒロインとはだいぶ違う。

 そう、喜美子は明確に「デキる女」なのだ。子ども時代は文字が読めなかったが、教師に高校進学を勧められるほどに成長。絵も上手で、アニメーターになった『なつぞら』のなつをしのぐ画力レベルだ。

 そして、家政婦の仕事も、最初こそ苦労はしたもののすぐにマスター。ちや子や酒田(溝端淳平/30)など、荒木荘の面々ともすでに仲が良く、コミュ力も半端ない。新しい環境で、喜美子の前に立ちはだかるのは、ラスボス感たっぷりの大久保ただ1人だ。

 しかしこの大久保への怒りも、枕と格闘するという独特のストレス解消法で晴らし、喜美子は元気にハツラツと大阪で暮らしている。そして、この格闘シーンが笑えてたまらないのだ。この他にも戸田恵梨香のコミカルな演技が笑いを誘う場面も多く、喜美子の魅力を引き立てている。31歳の戸田があえて15歳を演じることで出る、おばちゃんくささがポイントなのだろう。ひょっとすると、この喜美子は、キャラ、能力、ともに朝ドラヒロイン史上、最強ではないだろうか?

■『スカーレット』は戸田恵梨香で大正解

 のん(26)が演じた『あまちゃん』のアキのように、「ドジだけれど、愛され女子」という従来型ヒロインは、なるほど無名の新人がハマるだろう。しかし、喜美子のような15歳らしからぬ強さも面白さも持つキャラは、キャリア十分で幅広い演技ができる戸田恵梨香が適任なのだ。今回、戸田がオーディションなしでヒロインに指名されたことも、納得できる。

 思えば『まんぷく』の安藤サクラ(33)も30代になってからのヒロイン抜擢だったが、演じた福子もこれまでの朝ドラヒロイン像を打ち破る強いキャラで、ハマり役になった。実力派女優が新タイプのヒロインを演じる、そんな新潮流が朝ドラに生まれているのだ。

 ここまで安藤サクラ、広瀬すずと、有名女優のヒロインが続いたことで、『スカーレット』の戸田も、さぞ気合が入っているはずだ。実力派の戸田恵梨香が、ニュータイプのヒロイン喜美子をどう表現していくか、半年間ゆっくり見守りたい。(朝ドラ批評家・半澤則吉)

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