恋かすらもわからなかったもの (2/3ページ)
課外活動や塾通いの中で「普通に」外部の男性と交際している女の子たちも当然いたけれど、内部での「恋愛ごっこ」の噂はそんな話と同じようなテンションで、学校生活に溶け込んでいた。
だが、彼女と私はというと、ハグもキスもしなかった。かろうじて手くらいは繋いだことがあったけれど、かなり慎重に避けていたようにも思う。
女子校ゆえ本来スキンシップへのハードルは低く、同級生と出会いがしらに「ぎゅー」とやるくらいの温度感は誰にでもあったけれど、だからこそ、気軽にスキンシップをした途端に、なんだか自分たちの関係が「ごっこ」になってしまうような抵抗感があり、その抵抗感を私は、何か神聖なもののように捉えていた。
ほかの人と一緒になりたくなくて、ぎりぎり思いついたのは、同じかたちの指輪をおそろいで買ってペアリングにすることだった。
今考えると、こっちのほうがよほど「ごっこ」だと思う。
■私と彼女のラブソング 天野月子『鮫』
その指輪を購入した雑貨屋は、相変わらず御茶ノ水にあるが、彼女と私の関係は、かれこれ10年前に途切れている。
シンプルな話で、大学に上がってしばらくして彼女に恋人ができ、最初は応援するふうに見せていた私が、だんだん被害者ぶった態度で彼女を責めたり、試し行動のような振る舞いをとってしまったりで、結果愛想をつかされたのだった。
その「被害者ぶりっこ」は、私がやっぱり本当は彼女に恋していたからだともとれるし、一方で、純粋に友だちだったがゆえに彼女が自分より先にいってしまったことへの激しい嫉妬を感じたからだともとれる。
その後私も、男性と何度か交際してはみたけれど、いまだに全然わからない。あの頃の気持ちは恋なのか友情なのか。きっとどちらでもあったのかもしれない。
はっきりしているのは、それでも今の私をつくりあげているものの大半は、彼女と一緒に共有してきた時間で占められているし、その時間はたしかにとてもしあわせだったということだ。