松下洸平『スカーレット』戸田恵梨香の大本命を確信させる圧倒的演技
連続テレビ小説『スカーレット』(NHK)が始まって約2か月。「あー泣いためっちゃ泣いた」「あかん超泣ける」と、ツイッターに感動コメントが踊る回も多いが、先週は注目キャスト登場でさらに盛り上がりを見せた。まずは11月23日の放送を振り返ってみよう。
喜美子(戸田恵梨香/32)の勤め先、丸熊陶業に十代田八郎(松下洸平/32)が入社。最初に会ったときは穏やかだった八郎だが、後日、顔を合わせるとどうも様子がおかしい。これには喜美子の師匠、深野先生(イッセー尾形/67)に対する、隠された想いが深く関わっていた……。
この放送も文句なく「泣ける」回だった。八郎が戦後のひもじさから、家にあった深野の絵を売ったことを謝罪。泣きながらのその切ない告白に、SNSでは「イッセー尾形と対峙してこの演技、あっぱれ」「まっすぐでとても力強い演技だったなあ」と絶賛の声が相次いだ。
登場初回では早くも喜美子と意気投合してみせるなど、最初から喜美子の恋人かと注目を浴びていた八郎だが、この23日の放送で人間としての奥深さも披露。いよいよ物語の重要人物となる雰囲気が出てきた。ほかに喜美子の恋人候補になりうる出演者は、幼なじみの信作(林遣都/28)ぐらいしか見当たらず、八郎は間違いなく喜美子のお相手候補筆頭だ。
■竹内涼真らのブレイクに続けるか
八郎を演じる松下洸平の名前を、今回の『スカーレット』で初めて耳にしたという人も多いだろう。それもそのはず、彼はこれまでドラマではちょい役の出演が多く、舞台の人という印象が強かった。もともとシンガーとしてデビューしただけに歌も上手で、数多くのミュージカルで活躍して実力をつけ、昨年は舞台『母と暮せば』の演技で文化庁芸術祭演劇部門新人賞を獲得している。知るひとぞ知る若手注目俳優として、今回、満を持しての朝ドラ初出演となったのだ。
朝ドラは『とと姉ちゃん』の坂口健太郎(28)、『ひよっこ』の竹内涼真(26)、そして前作『なつぞら』の吉沢亮(25)と、伸び盛りの俳優を絶妙なタイミングで起用してきた。『スカーレット』がまだ全国区とは言いがたい松下洸平の知名度を、飛躍的に上げる確率はかなり高い。
しかし、前述の先輩俳優たちの名前を眺めていると、一抹の不安を覚える。というのも、坂口、竹内、吉沢の3名はヒロインと「イイ関係」になったにも関わらず、結局は結ばれなかったのだ。近年の朝ドラは「ヒロインの旦那」にならずとも、若手俳優が大きなインパクトを残す傾向がある。そうなると八郎が喜美子の相手役に決定、とはまだ断言できないかもしれない。松下の演技に注目しつつ、これから始まるであろう喜美子との恋に、注目していきたい。(朝ドラ批評家・半澤則吉)
※画像はNHK『スカーレット』番組公式ホームページより