辻村深月 30代で「死」をテーマにした時に周囲から言われたこと (2/3ページ)

新刊JP

この小説で再会する死者は、そんなふうに依頼人の存在を反映する鏡のような存在に思えてくるんです。

会いたかった人に優しい言葉をかけてもらいたい人ばかりじゃなくて、「怒られるかもしれない」とか「あの人だったら何と言うだろう」とか、死者についての記憶を通して自分の行動や決断を考えたくて再会を望む人もいる。

主人公の歩美もまた、自分のおばあちゃんだったらどう言うだろう、と常に死者の存在を傍らに置きながら、迷いつつ成長していきます。実際に生きていたら相談なんてしなかったかもしれないことにも亡くなったおばあちゃんの目線で考える。死者を、現在の自分を写す鏡のように感じるというのは、そういうことだと思います。

――もし「ツナグ」が実際にいたとしたら、辻村さんは誰に会いたいですか?

辻村:前作の編集を担当してくださって、今回の本を書いている途中で亡くなられた新潮社の木村由花さんでしょうか。ただ、木村さんは名編集者だったので、私以外にも会いたいと希望する人がたくさんいらっしゃるはずだから、叶うかどうかは難しいのですが。『ツナグ』のシリーズは由花さんがいなければ生まれなかったものなので、いつか歩美に頼んで今回の本を渡してもらえたら嬉しいです。

――「死者との再会」というテーマの作品は、これまでにも何人かの作家が書いています。辻村さんがこのテーマを扱った理由はどんなところにあったのでしょうか。

辻村:「yom yom」の編集長だった木村さんから執筆依頼をいただいた際に、私の書いた「ぼくのメジャースプーン」という話が大好きだと言ってもらったんです。これまでも私の小説は読んでいたけれど、「これは尋常ではないと思い、一緒にお仕事を」という熱意に溢れたメールをいただき、この人の気持ちに応えるものがお返ししたいと思いました。

「ぼくのメジャースプーン」では、現実にはあり得ない「不思議な力」が登場します。あの話のような、小説だからこそ実現可能な少し不思議な設定を作るとしたらどんなものがいいか。そう考えた時に、人が一番、望むけれど叶わないことは「死者との再会」かもしれないと思ったんです。

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