辻村深月 30代で「死」をテーマにした時に周囲から言われたこと (1/3ページ)

新刊JP

辻村深月 30代で「死」をテーマにした時に周囲から言われたこと
辻村深月 30代で「死」をテーマにした時に周囲から言われたこと

出版界の最重要人物にフォーカスする「ベストセラーズインタビュー」。
第107回の今回は『ツナグ 想い人の心得』(新潮社刊)を刊行した辻村深月さんが登場してくれました。

辻村さんの『ツナグ』といえばシリーズ累計100万部に達した大ベストセラー。依頼人と依頼人が会いたい死者を再会させる「ツナグ」という役割を担う歩美の葛藤と成長、そして死者と生者を巡るドラマを描き、2012年に映画化もされました。

その続編となる今作ですが、当初辻村さんは続編を書くつもりはなかったとか。その思いが変わった背景にはどんなきっかけがあったのか。そして『ツナグ 想い人の心得』の物語をどう紡いでいったのか、ご本人にお聞きしました。
(聞き手・構成:山田洋介、写真:金井元貴)

■もし「ツナグ」が実際にいたとしたら……

――生きている側が一方的に死者を呼び出すのではなくて、死者の方にもその人に会うか選ぶ権利があって、死者の方も生きている人と会えるのは一度きり、というルールが物語にも影響を与えています。このルールだと、生きている方も思い悩みますよね。「自分は亡くなったあの人に会いたいけど、向こうは私よりも会いたい人が他にいるはず」とか。

辻村:最終章の「想い人の心得」はまさにそんな話です。前作を書いていた時は「ツナグ」はまさに死者という存在そのものをどこかから呼び出してきているという感覚だったのですが、だんだんと「呼び出すものは死んだ人の魂そのものでなくても構わないのかな」と思うようになったんです。

――魂でないとすると、どういったものなのでしょうか。

辻村:魂ではなくて、この世の中に残るその人の記憶をありったけ集めた姿を一夜の形にしているようなものなのかもしれないと考えるようになりました。たとえば「想い人の心得」で、若い頃に片思いしていた少女に会いたいと願う蜂谷という老人は、少女が生きていた頃の関係性そのままに「私が会いたかったのはあなたじゃない」と怒られることさえ望んでいるように思える。

「辻村深月 30代で「死」をテーマにした時に周囲から言われたこと」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧