またも「99%実話」か?『トヨトミの逆襲』で描かれる、トヨタ崩壊へのカウントダウン (3/3ページ)

新刊JP


CASEとは、C=コネクティッド(IoT、クルマがネットでつながる)、A=AIによる自動運転、S=カーシェアリング、E=EV電気自動車のこと。主役は自動車企業ではなく、ITの巨大企業たち。彼らが産業の垣根も国境もこえて、既存の自動車業界になぐりこんできているのだから、たいへんだ。CASEにパラダイムシフトすれば、もはや、複雑な内燃機関であるガソリンエンジンまわりの数々の部品を納入する下請け企業は淘汰されていく。

当然、話の筋はしんらつだ。創業者一族に生まれ育った「お坊ちゃん」ではあるが屈折した性格を持ち、「裸の王様」になっていく統一の周囲では、側近たちが権力闘争を繰り広げる。そして、完全に遅れを取ってしまったEV(電気自動車)開発。そこに異業界からのEV参入とサプライヤーの反目。日本を代表する自動車メーカーが窮地に立たされていく様はスリリングのひと言。

私たちが知っている経営者たちの顔はあくまで表の顔であり、次々と襲い掛かる困難や試練の裏では感情が激しく揺れ動き、人間としての弱さに振り回されているのだということにも気づかされる。

組織も同様だ。誰もが知る一流企業であっても、ドロドロの権力闘争が繰り広げられていることなど、珍しくもないだろう。この小説は、薄皮一枚で組織が機能不全に陥るのを食い止めている、あらゆる企業のぎりぎりの経営努力の現場が描かれている。

本作は読者がどのような位置から読むかによって印象が大きく変わる一冊だ。統一の人間性に着目しながら経営者としての成長を楽しむこともできるし、下請け企業のヒーローとして登場する森製作所の森敦志の視点で読むとまた味わい深い。自動車業界を知らずとも、多様な視点で読むことができる。

本作の終盤には未来のトヨトミ自動車と、統一の姿が描かれる。トヨトミは組織としての難局をどう乗り越えようとするのか。超問題作の結末を見てほしい。

(新刊JP編集部)

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