池脇千鶴“完脱ぎ”映画『ジョゼと虎と魚たち』~まぶし過ぎた22歳の裸体!

アスミックエース 2003年 DVD発売中
監督/犬童一心
出演/池脇千鶴、妻夫木聡、上野樹里、新井浩文、新屋栄子ほか
お正月映画の『男はつらいよ お帰り、寅さん』はおおむね好評のようだが、番外で、グラフィックデザイナーの大御所・横尾忠則氏が、「寅さん復活のアイデアは私の盗用」と山田洋次監督にクレームを付けたことで、〝80代の巨匠同士のイサカイ〟と注目されている。
まあ、山田監督は昔から、自分で〝原案・原作〟をうたうのが好きな人だから、〝寅さん〟に他人の名前を入れるのは、ただ単純に嫌っただけのこと。まさか、横尾氏にネジ込まれるとは思わなかったのだろう。「オレに文句を付ける人間がいたのか」と慌てたに違いない。取って付けたような山田監督の言い訳にソレが現れている。
それはともかく、この新作の〝寅さん〟で、小説家となった満男(吉岡秀隆)の担当編集者・節子を演じたのが池脇千鶴。もう四十路手前になっていたのには驚いた。
さて、〝寅〟と池脇ということで、つい連想するのが、この〝虎〟の方。もう17年も前、まだ22歳。15歳で8代目『三井のリハウスガール』に選ばれ、その後も〝理想の娘〟的な美少女ぶりが話題だったが、この映画で、前ぶれナシにスパッと脱ぎ、喝采したものである。
まさか脱ぐとは思わなかった中途半端な生き方をしている大学生・恒夫(妻夫木聡)は、早朝バイトの道すがら、坂道を暴走する乳母車と遭遇する。乗っていたのは、足は不自由だが自由闊達でユニークな少女・ジョゼ(池脇千鶴)。これがきっかけで恒夫は、祖母(新屋栄子)と住むジョゼの家に出入りするようになる。やがて祖母が亡くなり、2人は一緒に住むこととなるが…。
恒夫とジョゼが、部屋の中で、まだ性に不慣れな2人がぎこちなく始めるベッド・シーンが見もの。見る前、まさか〝清純派〟が脱ぐとは思わないから、心の準備がなかった(苦笑)。本当に自然な流れで、ポロリとおっぱいも乳首も露出する。そこが何とも潔く、まぶしいくらいだった。まだ〝おぼこさ〟も残る未成熟と言っていい膨らみが、逆に官能的であった。そして、不自由な体にもかかわらず、彼女が一生懸命、典型的な日本のごはんとおかずを作って恒夫に提供するシーンもすごくイイ。食欲と性欲、大事です。
公開時、映画専門誌の池脇・妻夫木対談で彼女は「ベッド・シーンを避けたらこの物語は成立しません」ときっぱり言っている。さらに、妻夫木に「他の女性とのはとても緊張したけど、チーちゃん(池脇の愛称)は別、ってどういう意味?」とツッ込んでいたが、互いにこの相手で良かった、と言い合っていたのが微笑ましかった。
すっかり成熟した池脇だが、あの〝ジョセ〟もまた懐かしい。
(映画評論家・秋本鉄次)
【画像】
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