中東の“火薬庫”レバノンに逃げ込んだカルロス・ゴーン被告の誤算 (2/2ページ)

週刊実話

レバノンは、国民に対してイスラエルへの入国を法律で禁じており、ゴーン被告を「この罪に問うべきだ」との声もある。

「すでにレバノンの若者からは“内通者”と批判されています。ゴーン被告は、ブラジル、レバノン、フランスの3カ国の国籍を有しているため、当然、レバノンの法律も守る義務がある。このイスラエルへの入国が、ゴーン被告のアキレス腱になる恐れは十分にある」(全国紙特派員)

 実際、日本から国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、取り調べを求められたレバノンの検察は、ゴーン被告の聴取を行った。

「聴取の内容は日産の事件がメインですが、レバノン国営通信は、『イスラエルに入国した罪』についても話を聞く方針だと伝えています」(同)

 ゴーン被告は一連の経済事件については一貫して無罪を主張。一方、イスラエル入国に関しては、1月8日の記者会見で「仏自動車大手ルノー幹部のフランス人として訪問した」と釈明した上で、「レバノンの人々に謝罪する」と表明した。

 緊迫する中東情勢が、自身にもたらす影響を熟知しているゴーン被告。その焦りは8日の記者会見が“腰砕け”になったことからも見て取れる。

「当初は、自身の逮捕劇に関与した『日本政府関係者の実名も出す』と意気込んでいましたが、フタを開けてみたら、クーデターの当事者として既に名前が挙がっている西川廣人前社長らへの恨み節に終始。日本政府関係者の実名も『レバノン政府を当惑させたくない』との理由で公表を差し控えました」(経済部記者)

 ゴーン被告が日産を食い物にした疑いは濃厚だが、同被告が主張するように「日産がルノーに吸収合併されること」を恐れた日本政府が主導した国策捜査による逮捕だった側面も否めない。会見では、“黒幕”として菅義偉官房長官の実名を出し、日本政府に反撃する予定だった。

「菅長官は、日産の本社(横浜市西区)がある衆院神奈川2区の選出で、両者はかねて関係が深い。最初の逮捕の際も、日産の川口均専務(当時)が首相官邸を訪ね、菅長官に報告したほど。そのあたりを突いて、『政財官が一体となった国策捜査だ』と主張していれば、国際世論もゴーン擁護に傾きかねなかった。しかし、中東情勢が再び緊迫すれば、レバノンが手のひらを返して、ゴーンを政治的な交渉材料にすることもありえる。万が一を想定して、そこまでの反撃ができなくなったのです」(政治部記者)

 まんまと日本脱出に成功したまではよかったが、ゴーン被告自身の“リバイバルプラン”には徐々に狂いが生じ始めている。

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