ゾロアスター教が鳥葬を行う理由は?鳥葬に込められている思いとは? (3/4ページ)
神話の神々の体系で頂点に位置するのは天空神か太陽神であることが多い。ギリシャ神話の最高神は天界を治めるゼウスであるし、日本の八百万の神々の頂点に位置するのは天上界(諸説あり)である高天原におわす太陽神・天照大神である。アリストテレス(BC.384-322)はこの世は月を境界として、天上界と月下界(地上)から構成されているとし、地上は破壊と生成が繰り返される世界、天上界は完全な世界であるとした。空を飛べぬ人間は天空を仰ぎ理想の世界を夢想したのである。
変わったところでは西欧の黒魔術に憎い敵の髪と爪を生肉に仕込みカラスに食べさせるという呪術がある。呪われた者の魂はカラスに地獄に連れていかれるという。ベクトルは真逆ながら鳥が魂を運ぶとされてきた名残りだろうか。
■憧れてはいるものの不可侵の領域でもある天空
一方で人間は天空に憧れながらも決して及ぶことのできない現実を自覚していた。ギリシャ神話のイカロスは蝋の翼を太陽に溶かされて墜落して海に沈んだ。天に届かんとして建設されたバベルの塔は神の怒りを買い雷撃によって崩壊した。人間が肉体を持ったままで天に昇るのは難しい。鳥葬には空を舞う鳥に魂だけでも運んでもらいたいという切なる思いを感じる。
現在鳥葬は猛禽類の減少などで存続が危ぶまれているという。また鳥葬施設の使用もインド・パキスタンのみで欧米では拝火寺院すら無く、ゾロアスター教の伝統的慣習の衰退が危惧されている。しかし人間に天空への憧れがある限り鳥葬は続いていくだろう。
■誤解されがちなゾロアスター教の鳥葬だが…
古来より血肉を嫌う日本人は鳥葬を理解するのは中々難しいかもしれない。カラスなどが死体を啄む姿は戦争や飢饉で荒廃した情景としてよく描かれるところである。しかしあらゆる慣習には意味があり、掘り深めていけば人類共通の思いを見出すこともできる。ゾロアスターの鳥葬もそのひとつである。