かつては「幸せな気分になる薬」だったが… 人類の歴史を変えた「薬」たち (2/3ページ)
有効に作用する容量の幅が狭く、多すぎると呼吸がとまる。1900年頃は過剰摂取による事件が新聞に常に載っていたという。まさに「金になるし、殺しの道具」にもなったのだ。
それから、より安全で常用性をもたらさないオピエート(モルヒネアルカロイド)を探す研究が1世紀にわたって重ねられ、現在でも厳格な管理のもと、医療用麻薬としてがんの治療などでモルヒネは使われている。
一方で、アヘンやモルヒネは法的に管理されている。なぜならば、これまでの人類の歴史に深く根差し、影響を与えてきた薬物だからだ。
短所がなく長所だけを得ることはできない。あらゆる科学的発見は諸刃の刃で、身体的にも心理的にも、利益には間違いなく危険が結びついている。
人は利益に飛びつき、危険は放置してあとで処理しようとする。それこそ、喜びをもたらす植物から生まれた、神の薬であるアヘンに対して人びとが起こした反応である。
(『歴史を変えた10の薬』p.76より引用)
これは、メディカルライターであり、オレゴン大学プレスのディレクターを務めるトーマス・ヘイガー氏による『歴史を変えた10の薬』(久保美代子訳、すばる舎刊)による一節であり、「薬」というものの本質を言い表している。
メリットがあれば、デメリットもある。アヘンはその振れ幅がとてつもなく大きかった例だ。
本書は、タイトル通り、歴史を変えた薬を10例取り上げている。もしこれらがなければ私たちの住む世界は大きく変わっていたかもしれないというものばかりだ。
例えば「天然痘」は今でこそ根絶している感染症だが、1796年にイギリス人医学者のエドワード・ジェンナーが、牛にできる牛痘の膿を接種する(ワクチン接種)と予防になることを突き止め、根絶の道が開けている。
天然痘はそれまで致死率が極めて高く、身分の高い低いを問わず人を殺していく「怪物」だった。