昔の日本ではきちんとした座り方ではなかった「正座」が丁寧な作法に取り入れられた理由

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昔の日本ではきちんとした座り方ではなかった「正座」が丁寧な作法に取り入れられた理由

きちんとした座り方は「正座」…昔からどこでもそうだったの?

葬儀や法事、改まった食事の席、武道の稽古や試合、時にはお説教をされるとき…私たちが「正座」をする機会って、意外とよくありますよね。

ところで
「なぜ正座をするの?」
と質問されたら、あなたはなんと答えますか?

「それは、正座はきちんとした丁寧な座り方だから…」
と答えたあなた、では
「なぜ『正座』はきちんとした座り方なの?」
と問われたら、答えられますか?

そもそもなぜ「正座」が「正しい座り方」になったのでしょうか?
これは日本独特の習慣なのでしょうか?

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正座は日本の伝統的な座り方ではなかった?なぜ「日本人の正しい座り方」になったのか?

アジアの近隣諸国でも昔の日本でも「きちんとした座り方」は違った

実は、昔の日本や海外の「正しい、きちんとした座り方」は違っていました。昔の日本の武士や貴族、僧侶などの肖像画を見てみると、現在の「正座」とはずいぶん違った座り方をしていることが分かります。

座った姿の在原業平/画像出典:Wikipedia「在原業平」

江戸時代以前の日本では、現在の「正座」に該当する「正しい、きちんとした座り方」は、「あぐら」でした。ですから、平安時代の装束である男性の袍や女性の十二単は、下半身部分が大きく作られており、正座よりあぐらに向いた作りとなっていました。

近隣のアジア諸国を見てみると、韓国でも正式な座り方は「あぐら」か「立膝」でした。『チャングムの誓い』などの韓国時代劇では、王や皇后など身分の高い人の前で、仕える人々がみんなそのような座り方をしています。

画像出典:Wikipedia「醍醐天皇」

また中国では椅子に座るのが正式だったため、当時の中国の文化を取り入れた奈良~平安時代初期の天皇などが椅子に座り、足を組んだ肖像画も残っています。

「正座」が丁寧な作法に取り入れられた理由

「あぐら」が正式な座り方だった日本で「正座」が「正しい座り方」となったのは、江戸時代からです。

きっかけは、江戸幕府が「参勤交代のため全国から集まった大名たちが将軍に向かって座るときの座り方」として、小笠原流礼法にもとづいた現在の正座を定めたことでした。

それが明治維新による「四民平等」により礼法が統一される中で、一般の人の間でも「かしこまった座り方=正座」とされたのです。

それにしても、長時間続けると足がしびれてすぐには立ち上がれなくなるような「正座」が、なぜ敢えて将軍の前で座るときの礼儀作法とされたのでしょうか?

実は自然界では、正座は人間だけが行う座り方で、他の動物はしません。
理由は、弱肉強食の自然界で足がしびれて立つだけで時間がかかるような座り方をしていたら、他の肉食動物の格好の獲物となり、生き残れないからです。

逆に考えると、目上の人の前で目下の人が正座をしていたら、不意打ちで目上の人を襲撃!ということは難しくなるといえます。

このことがどれくらい影響したのかはわかりませんが、江戸時代にはそれまで存在した「下剋上」がなくなり、「士農工商」の身分制度が確立、「太平の世」が1603~1868年という265年間にわたって続くことになったのでした。

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