「節税対策」だけではダメ 相続専門税理士が指摘する相続の落とし穴 (3/3ページ)

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木下:そうですね。兄からすれば「非課税じゃなくてもいいから、俺にも3,000万円くれよ」です。もらえないよりはもらったほうがいいからと。実際そうすれば公平感は出るのでしょうが、節税だけが頭にあるとなかなかそうはしないんです。

もう一つ例を挙げましょう。亡くなった人の自宅を同居していた人がそのまま相続すると、自宅敷地の相続税評価は8割引になるんですね。たとえば世田谷区に1億円(建物は古く価値なし)の自宅(敷地330㎡)を持っていた親が亡くなった場合を考えてみましょう。両親の片方はすでに亡くなっていて、二次相続だとします。法定相続人は息子2人で、長男が親と同居していたと想定します。

8割引ですから、家を長男が相続すると、相続税評価は2,000万円なんです。それに加えて預貯金が2,000万円あったとしたら合計で相続税評価は4,000万円。節税効果は抜群です。

ところが、これがもめやすい。「俺が不動産を相続するから、預貯金の方は持っていってよ」と言われても弟の方は納得しません。弟からしたら「家と預貯金で合計1億2,000万なんだから、その半分の6,000万円くれよ」となる。

――たしかにそうですね。

木下:もっと言えば、家の分の1億円というのは、土地の立地ごとの値段が定められた「路線価」という国税庁が出している資料をもとに算出したもので、時価とは違います。今は不動産が値上がりしていますから、この世田谷の家の時価は2億円だったりする。そうなると弟は「2億2,000万円の半分よこせ」と言えてしまうわけです。

――このケースでもめないようにするにはどうすればいいのでしょうか。

木下:「家は同居している長男に。預貯金は次男に」と遺言を残しておくしかないでしょうね。ただ、あまりに公平性がない場合のために民法で「遺留分」というものが定められていて、この場合は二次相続で法定相続人が兄と弟の2人ですから、弟は遺産の4分の1まではもらう権利があるんです。

だから、先ほどのケースで考えると、弟からしたら時価2億2,000万円の4分の1ということで5,500万円まではもらう権利がある。「残りの3,500万円をくれよ」ということはできます。ただ、遺言がないと「1億1,000万円くれよ」となって出口が見えない争いになってしまいますから、遺言はあったほうがいい。

いくつか例を挙げて説明しましたが、相続は「節税対策」と「もめない分け方」が両立していないとだめなんです。そのために遺言は有効な手段ではあります。とはいえ日本人で公正証書遺言を書いている人は10%もいないのが現状ですが(自筆証書遺言を含めるともう少し多くなるかと思います)。

(新刊JP編集部)

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