地味キャスト『スカーレット』それでも朝ドラファンが「歓喜するワケ」

日刊大衆

※画像はNHK『スカーレット』番組公式ホームページより
※画像はNHK『スカーレット』番組公式ホームページより

 2月に入り、いよいよ最終回へのカウントダウンが始まった連続テレビ小説スカーレット』(NHK)。2月1日の放送はもらい泣きする視聴者が続出しネットでは「神回」と報道されたが、朝ドラ批評家の筆者としては、朝ドラのあり方を考えさせられる回となった。ここではその内容を振り返り、あらためて朝ドラというものを考えてみたい。

 穴窯で陶器を焼くことに何度も失敗し、気分転換のために大阪にいるちや子(水野美紀/45) を訪ねた喜美子(戸田恵梨香/31)。そこでラジオから聞こえてきたのが雄太郎(木本武宏/48)の歌声だった。その歌を聴きながら、八郎への想いを募らせる喜美子。翌日、そんな彼女の前に、かつて荒木荘で苦楽を共にした雄太郎と大久保(三林京子/68)がやってきて……という展開だった。

 キャストの名前をあらためて見ると、正直、地味だ。けれども、この地味さが、このドラマに面白みを与えてきたと痛感させられたのだ。雄太郎がヒット歌手になったという展開は視聴者をクスッとさせ、そして涙を誘った。雄太郎の哀愁が漂う歌もすてきだったが、後に喫茶店「さえずり」のマスター(オール阪神/63)と再会するシーンが実に感動的だった。

 そしてそして、喜美子の人生の師、大久保さんの再登場だ。SNSでも「かわいすぎたしなんだか泣ける」「泣く……ガチで正座で泣いた」といったコメントが寄せられた。喜美子が大久保さんに「家の中の仕事ができる女はなんでもできる」と激励される場面にはにんまり、そして思わず涙してしまった。

 半年に渡る朝ドラでは、この手の再会がつきものだが、この荒木荘の面々と喜美子の再会は朝ドラ史に残る名場面といってよいのでは。喜美子が穴窯で失敗したり、八郎と別居してしまうなど、いろいろな問題を抱えているタイミングで受けた大久保さんからの叱咤激励に、胸を熱くしたのは私だけではないはずだ。

■古き良き朝ドラの復活を!

 今回の再登場シーンでは荒木荘の回想がほぼなかったが、回想などなくても視聴者は若き日の喜美子を思い出し、彼女を見守ってきた人々の優しさをじんわりと胸に感じた。『スカーレット』は人それぞれのキャラクターに目がいく、セリフがしっかり聞こえてくるドラマだからだろう。派手なキャストが少なめで、一見、地味に見える配役だが、それが劇中の登場人物のキャラ立ちに貢献し、朝ドラの世界に没入させてくれた。昔の朝ドラを思い出させてくれる作品だったといえる。

 広瀬すず(21)主演の前作『なつぞら』、窪田正孝(31)と二階堂ふみ(25)が出演する次作『エール』は大河ドラマを超えるような重量級キャストだが、朝ドラがこんなに豪華になったのは最近の話だ。ひと昔前までの朝ドラはヒロインもオーディションで選び、ほかのキャストも地味な面々だったが、それらをうまく配して人生の機微や悲喜こもごもを紡いできた。豪華キャストが悪いわけではないが、『スカーレット』のように渋いキャストでも良作を作れるのもまた事実だ。残念ながら、この日の平均視聴率は19.2%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と、20%台には届かなかったが、ドラマとしては最上の出来だった。

 筆者は朝ドラの次々作『おちょやん』の主演に杉咲花(22)が選ばれたことを喜んだ一人でもあるが、そろそろ2018年上半期『半分、青い。』の永野芽郁(20)以来のヒロインオーディション作も見てみたい。『スカーレット』神回でかいま見られた、地味だけど見事な「配役の妙」。ただの感動回でなく、古き良き朝ドラの美学を思い出させてくれる傑作回だった。(朝ドラ批評家・半澤則吉)

※画像はNHK『スカーレット』番組公式ホームページより

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