脳に直接信号を送る「視覚インプラント」で6年ぶりに光を取り戻した女性(スペイン研究) (2/5ページ)
それでもペースメーカーや人工内耳といった人体に作用する電子機器ならいくつもある。
後者は、外部マイクで拾った音をデジタル信号に変換し内耳のインプラントに送信する、いわば”義耳"だ。
デジタル信号を受け取ったインプラントは、電極を通じて脳が音を解釈する神経に電流パルスを流す。1961年に初めて実用化され、今では世界で50万人以上がこれを使いながら日常会話を交わしている。
視覚インプラントについてはゴメスさんが初めての事例となったが、フェルナンデス博士は、今後数年のうちにさらに5名ほどに移植すると話す。
・視覚インプラントの歴史
視覚インプラントの実験には長い歴史がある。
1929年、ドイツの神経科医オトフリート・フェルスターは、手術の最中に脳の視覚皮質に電極を当てると、患者が白い点を見ることに気がついた。
この「眼内閃光」の発見以来、科学者やSF作家は脳につないだカメラを通じて世界を認識するシステムを夢想してきた。
そして2000年代初頭、夢物語はついに実現へ向けて動き始め、視覚インプラントが人間の頭部に初めて実験的に移植された。
が、実験を行ったウィリアム・ドーベル博士がインプラントに電源を入れると、患者はてんかんを起こし、身悶えしながら崩れ落ちたという。
原因は、脳に電流を流しすぎたことだった。また感染症という問題も生じた。そしてドーベル博士自身が2004年に亡くなると、この実験は中止を余儀なくされた。
盲目の治療と主張したドーベル博士とは違い、フェルナンデス博士は、「期待しないでほしい」と一貫して述べている。最終的には人々に光を取り戻させることが目標なのだとしても、「現時点では初期実験を行なっているだけ」であると。
だがゴメスさんは実際に見えた。