『呪怨』『犬鳴村』清水崇監督「狭める力が強い思いと表現を生む」 (2/2ページ)

日刊大衆

僕は不器用だったから逆に続いたのかもしれません。

 その後、映画『呪怨』がヒットして、ハリウッドで僕が監督してリメイク版を作ることになりました。

 海外での仕事で感じるのは、日本と比べて“ゆとり”があるということ。たとえば、ハリウッドは、すごくビジネスライクです。お金を払えば、たいていの場所で撮影許可が取れるし、自分の仕事が終われば、監督や先輩の前でも平気で脚を組んでタバコを吹かしていたりする。キャストやスタッフも組合に守られていて、撮影時間がオーバーしても、ちゃんとその分のギャラが発生するし、オーバー分の時間も確保される。だから、みんな余裕があって、あくせく働いている感じがしないんです。

 その一方で、日本はいまだに根性論がまかり通っている縦社会。日本人の“遠慮の美学”と、個人の主張のバランスが取れていない気もします。でも、ビジネスライクに振り切らない良さもある。日本はお金で動かないことが、人間関係や信頼で動いたりする。日本のシステムだからこそ、作れるものもあります。

 昨今、表現者の立場からすると「コンプライアンス」がひとつの大きな課題です。そもそもコンプライアンスが何なのか、具体的にハッキリしていない。なのに、みんなすごく気にしている。コンプライアンスでの規制が、自由な発想を狭めている傾向は、実際感じることもあります。

 でも、「束縛があってこその表現」という側面もある。それはたぶん、どの時代でも同じだと思うんです。狭める力があるからこそ、「だったらこうしてやる!」という強い思いと新しい表現が生まれるし、それができないようでは、どのみち続かない。作る側としては、立ち向かう発想の豊かさが必要なんだろうなと思います。

清水崇(しみず・たかし)

1972年、群馬県生まれ。大学で演劇を専攻し、1996年公開の映画『眠る男』の見習いスタッフとして業界入り。1998年、ドラマの短編枠で監督デビュー。99年にVシネマ『呪怨』が大ヒット。2004年にはハリウッドでリメイクした『THE JUON/呪怨』で、日本初となる全米興行成績1位を獲得。近作に『魔女の宅急便』『こどもつかい』など。科学映画『9次元からきた男』が東京・日本科学未来館にて公開中。

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