戦場で生まれた絆!奥州征伐で抜け駆けした鎌倉武士の縁談エピソード【下】 (3/4ページ)
「……しかし、五郎は可哀想じゃったのう……」
「まぁ、しょうがないじゃんね。それが戦っちゅもんだ(戦というものだ)……」
かつて一念発起して甲州・信州の地から頼朝公の挙兵に馳せ参じて以来、共に修羅場を潜り抜けて来た戦友が、大切にしていた弟分を失った哀しみを、清近は痛感していました。
知らぬは本人たちばかり……遠く奥州で決まった縁談そこで清近は提案します。
「ほうじゃ……ウチに娘がおるんじゃが、小次郎ンとこのご嫡男……太郎君(たろうぎみ。後に元服して長光)のおかっさん(嫁)にどうでぇ?」
「いいんけ?あンずでぇおじょうもん(いいのか?あのとても美しいお嬢さんを)」
「いいさよー。太郎君は男前で文武両道と来りゃあ、お似合いじゃんねー」
……いやいや「いいさよー」じゃないよ、いくら親の都合とは言え、せめて事前に打診くらいしてやんなさいよ、とツッコミを入れたくもなりますが、命を救われた恩義と、弟分を失った戦友の哀しみを前に、清近は愛娘を差し出さずにはいられなかったのでした。
そんな二人の美しい友情を見ていたのは、風に揺れる敵将の生首二つ。彼らも遠く甲州と信州の地で、知らぬ間に結婚が決まった(面識があるかどうかも怪しい)若い二人を祝福してくれているのでしょうか。