マリアナ諸島におけるクジラの座礁の半数は、軍のソナーテストの後で発生していたとする調査結果(米研究)

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マリアナ諸島におけるクジラの座礁の半数は、軍のソナーテストの後で発生していたとする調査結果(米研究)
マリアナ諸島におけるクジラの座礁の半数は、軍のソナーテストの後で発生していたとする調査結果(米研究)

crwpitman/iStock

 電波領域のレーダーに対応し、反響定位を用いて目標の情報を得る軍のアクティブソナーがクジラにとって生命に関わるほど危険であることを示す科学的証拠がこれまでも指摘されていたが、今回の研究もやはりこの説を裏付けている。

 『Proceedings of the Royal Society B』(2月19日付)に掲載された研究は、マリアナ諸島で起きたクジラの座礁(座礁クジラ)と海軍の潜水艦が使用する中域周波数ソナー(MFAS)に関連性があると述べている。
・中域周波数ソナーが導入された翌年から座礁クジラが発生

 今回の研究によれば、1962年から2006年にかけて、マリアナ諸島でクジラの座礁が報告されたことは一度もなかったのだそうだ。

 しかし2007年から2019年1月にかけては、グアムとサイパンで座礁クジラが8件(計10~11頭)報告されている。

 マリアナ諸島でMFASが導入されたのは2006年のことで、以降ほぼ毎年MFASのテストが行われているという。

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Anne Webber/iStock

・座礁クジラの半数がテストから6日以内に発生

 調査から明らかになったのは、この期間に起きた座礁クジラ8件のうち半分が、MFASのテストから6日以内に起きていたことだ。

 たった4件と思うかもしれないが、同じような事例はほかのさまざまな科学文献でも報告されているという。

 1960年代に4.5~5.5kHzのMFASが導入されてから、それと関連づけられているアカボウクジラの座礁が12件あるほか、海軍の基地や船の側ではさらに27件の集団座礁クジラが目撃されている。

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rustyl3599/iStock

・実態はもっと多い?

 過去の研究からは、すべての集団座礁クジラのうち9パーセントは海軍によるMFASの使用が原因であることが示唆されている。

 しかし今回の研究グループは、これについて控えめな数値であると述べる。というのも、先行研究は複数のクジラが座礁した事例のみを取り上げたものだからだ。

 一方、マリアナ諸島の事例は、8件中6件がクジラ単体の座礁で、うち2件がMFASとの関係を疑われている。


・軍用ソナーの音がクジラを怯えさせる?

 仮に軍用ソナーがクジラに被害を与えているのだとすれば、なぜなのだろうか?これについて、ノイズが不意に鳴ることでクジラが怯えるという説が提唱されている。

 ソナーの周波数にさらされたクジラはストレスを受け、必死にソナーの発信源から遠ざかろうとして潜水のパターンが乱れバランスが損なわれるという。

 23種が属するアカボウクジラ科はMFASに特に弱いとされるが、この仲間がMFASを意図的に避けていることを明らかにした研究がある。

 それによると、海軍の基地付近に生息しており、普通よりは人工音に慣れているだろうと考えられる個体であっても、MFASが作動すると習性に変化が見られるのだという。

 研究グループの提案はかくもシンプルだ。

 「座礁クジラを防ぐために、海軍演習の前後やその最中、海や海岸沿いで目による監視をもっと行うよう強く推奨する。」

References:iflscience/ written by hiroching / edited by parumo
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